年金が大幅に減ってしまった

昌彦さんが受給している年金のうち、加給年金については、最長で20年間加算されるはずでしたが、離婚によって彩さんが配偶者ではなくなったため、加算されなくなったのです。

昌彦さんにとって、年間42万円の加給年金がなくなるのはもちろん痛手です。

ただ、昌彦さんが失ったのはこれだけではありません。

夫婦が離婚した場合の「年金分割制度」というものがあります。婚姻期間中の厚生年金記録を分割する制度で、分割後の記録で今後の老齢厚生年金の額が決まることになります。

昌彦さんの厚生年金加入期間は彩さんよりも長く、また加入期間中の報酬も高かったので、昌彦さんの納付記録を、彩さんに分けてあげることになりました。

この年金分割の結果、昌彦さんの老齢厚生年金受給額が40万円ほど減ることになったのです。

昌彦さんの老齢厚生年金は130万円、老齢基礎年金は75万円のままで、合計205万円まで減ってしまいました。

アルバイトをして補うことに

「年金は290万円近くあったのに、大幅に減ってしまった……」

昌彦さんは年金が減ってしまったことで急に心細くなりました。役員に復帰できないかもとの会社に聞いてみたところ、後任が既に決まっているため復帰できないという返事でした。

年金だけでは足りなかったため、昌彦さんはアルバイトをして補うことにしましたが、思い描いていた老後とはまったく違う生活となってしまったのでした。

2026年度になり、在職老齢年金の基準額は51万円から65万円に改正され、その結果、支給停止されにくくなりました。

たとえ将来的な離婚は避けられなかったにしても、もし昌彦さんが役員を続けていれば、すぐに離婚はしていなかったことでしょうし、また、支給停止されるのは老齢厚生年金(報酬比例部分)の一部だけにとどまり、加給年金については年間約42万円の全額が加算されていたのでした。

加給年金は夫婦の年齢差があるほど加算期間も長くなりますが、加算条件を確認しておくことが大切です。2028年4月以降に65歳になる人は、加給年金の額が現行の42万円より1割少なくなりますので、その対象となる人は改正点も把握しておくと良いでしょう。

 

※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。