秘密の貯金を知った夫の反応

その日の夜に仕事から帰ってきた健介の食事中に旅行の話をすると、健介は味噌汁を飲んでいた顔をあげた。

「……別に泊まりなのはいいけど、お金は」

「それは大丈夫。実は昔から500円玉貯金をやっててね、それを使えば家計には影響出さずにすむから」

健介は箸を止め、少しだけ眉を寄せた。

「……生活費から貯めてたってこと?」

「うん。無駄遣いしないで少しずつ貯めていたの」

「ふうん……」

健介はそう言って野菜炒めに箸を伸ばした。もう少し突っ込んで聞かれるかと思ったが、健介はそれ以上何も聞いてこなかった。

「だから旅行は行っていいよね?」

「1泊なら別にいいけど。でも陽奈にはちゃんと説明しておいてくれよ。急にママがいないってなると寂しがるだろうし」

健介があまり納得していないのは伝わってきた。もう少し快く認めてほしかったが、ここで変に揉めて反対に回られるのも面倒だった。

「分かった、そうするね」

恵美香は装った明るさでそう言って、話を終わらせた。

 

   ◇

 

それから数日後、恵美香はいつものように買い物から帰ってきて財布から500円玉を取り出した。しかし手で持ち上げた瞬間、異変に気付いた。この前に持ったときよりも軽くなっていたのだ。

恵美香はすぐに底のゴム栓を外してキッチン台の上に500円玉を出した。

「嘘でしょ……?」

転がり出てきた500円玉は恵美香が前に確認したときよりもかなり少なくなっていた。恵美香はその場から動くこともできず、机の上の硬貨をじっと見つめていた。

●友人との温泉旅行を前に、専業主婦のささやかな楽しみだった500円玉貯金に異変が起きる。減っていた中身を前に凍りついた恵美香は、やがて夫婦のお金の感覚に潜んでいた見過ごせないズレと向き合うことになる…… 後編【「俺が稼いだ金だろ?」500円玉貯金を黙って抜いた夫が逆ギレ…妻を凍りつかせた“衝撃の一言”】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。