「おひとりさま」の覚悟を決めて…1LDKに込めたプライド

それからの3年間、私はがむしゃらに働いた。会社でのプロジェクトに自ら手を挙げ、実績を積んで、年収は650万円まで上がった。

婚活を辞めたことで、毎月つぎ込んでいた服飾費や美容代、デート用の交際費は劇的に減った。浮いた固定費をそのまま貯蓄に回し、生活水準を変えずに先取り貯蓄を徹底したことで、お金は面白いように貯まっていった。

そして36歳になった今年。私の通帳には、しっかりと500万円の貯蓄が戻ってきた。私はそのお金を頭金にして、都内に中古の1LDKのマンションを購入した。

35年ローン。大きな決断だった。周囲からは「一生独身でいるつもり?」「家を買ったらいよいよ結婚できなくなるよ」と、相変わらず余計な雑音が聞こえてくる。

けれど、鍵を受け取りまだ何も置かれていない部屋に入った時、私は心の底から満たされていた。この家は誰かに選んでもらった場所じゃない。私が自分の力と責任で手に入れた、世界で一番安全な砦だ。

これから先、もしかしたら素敵な出会いがあって、誰かと共に生きる道を選ぶこともあるかもしれない。けれどそれは「ひとりで生きていけないから」ではなく「その人と一緒にいたい」から選ぶ道だ。

型にハマる必要なんてない。私は私としてこの人生を生きていこう。

窓の外に広がる東京の街並みを見下ろしながら、私は新築の匂いがするフローリングに深く足を踏み締めた。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。