成婚目前で突き付けられた「あり得ない条件」

そんな中、仮交際に進んだのが年収900万円の一流企業に勤める36歳の男、健一だった。彼は清潔感があり、マニュアル通りの私を「品があって素敵ですね」と褒めてくれた。

「この人を逃したらもう次はない」

私は健一に気に入られようと必死だった。

彼が「自立した女性が好きだけど、結婚したら家庭を優先してほしい」と言えば、「もちろん、仕事はセーブします」と嘘をついた。彼好みのブランドの服を買い揃え、美容院に通う頻度を上げ、デートのたびに手土産を用意した。入会から1年。相談所の費用、デート代、美容代、服飾費……20代の頃からコツコツ貯めていた貯金からは気付けば100万円が吹き飛んでいた。手元のお金が減るたび、精神的な余裕も削られていく。

そして、3回目のデート。高級フレンチのディナーの後、健一は静かに切り出した。

「麻衣さん、僕たち、すごく気が合うと思うんだ。だから、真剣交際に進む前に、一つだけ確認しておきたいことがあって」

心臓が期待でトクンと跳ねた。ついにここまでたどり着いた。これまでの苦労が報われる。私は「はい、何でしょうか?」と、最高の微笑みを浮かべた。

しかし、健一の口から飛び出したのは耳を疑うような言葉だった。

「僕の母がね、結婚するなら相手の家の『資産状況』と『血筋』を証明する書類を出してほしいって言うんだ。あと、麻衣さんの貯金口座の残高コピーも。うちは代々資産家だから、変な女に入り込まれたくないんだよね。君、貯金は当然、1000万くらいはあるよね?」

──頭の中で、何かが音を立てて崩れ落ちた。

●健一が差し出してきたのはあまりにも身勝手な値踏みの条件だった。焦りから1年間で100万円を婚活に費やした麻衣。ついに本音が爆発し、「ある決断」を下すことになる。後編【「選んでもらえるだけありがたいと思え」婚活で出会った“面接官気取り”の男性と壮絶バトル…33歳女性が涙した「本当の理由」】で詳説します。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。