「ここはゴミ捨て場じゃないの!」

それはとある日の夕方の出来事だった。

「やめてよ!」

玄関先から、晴子の叫び声が聞こえた。

「ここはゴミ捨て場じゃないの!」

慌てて玄関を飛び出した洋之が目にしたのは、バックパックを背負う観光客グループが、巨大なゴミ袋を5つほど抱え、岡本夫妻宅の玄関先に突っ立っているところだった。

「どうした?」そうたずねた洋之に、晴子は強い調子で訴えた。

「この人たち、うちをゴミ捨て場だと勘違いしてるのよ!」

晴子が指差す地面には、スナック菓子や弁当の空箱などがまき散らされている。

少し英語ができる晴子が、身振り手振りを交えて聞いたところによると、観光客たちは民泊オーナーから、「ゴミは隣の敷地に自由に捨ててよい」と聞いていたから捨てただけで、悪気はなかったという。

むしろ晴子の怒りを目の当たりにして、事情がわかったらしく、観光客グループは神妙な面持ちで何度も謝罪し、ゴミを回収して去っていった。

「これ、あからさまな嫌がらせじゃない? こんなの許しておけないよ」

憤懣やる方ない調子で言う晴子に、洋之も同意したのだった。

「ああ。今度こそきっちり話をつけてくる」