「親の金でのうのうと生きてる奴とは違うんだよ!」

「どなた?」

インターホンごしに不機嫌そうな声が流れる。それだけで洋之は尻込みしてしまったが、ここで引き返すと晴子が怒ると思い、勇気を出して言った。

「あの、隣の家のものですが」

インターホンの音声が途切れ、程なく、玄関ドアが開き、50代くらいの小太りの男性が中から出てきた。半袖のポロシャツの襟を立てて着て、足元はサンダル履きというラフな服装だった。

「あの」洋之が挨拶をしようと思ったその時だった。民泊オーナーの佐藤が先に口を開いた。

「あー、はいはい。お隣さんね。どうせ文句を言いに来たんでしょ。うるさいとかなんとか。しょうがないでしょ。静かにするようにお客さんには言ってるんで」

民泊オーナーの佐藤はそう言って顔をしかめた。

洋之は面食らった。うるさいことをすんなり認めたのも驚きだったが、こんなに開き直ってきたのも意外だった。

――まるでこっちが悪いみたいじゃないか……。

洋之もさすがに腹が立ったが、熱くなると負けだと思って、なるべく冷静に続けた。

「けど、最近本当にひどくて。深夜に出入りされるんで、音が気になって寝れないって、妻が悩んでいるんですよ」

洋之は晴子をダシにつかったが、逆効果だった。

口ごたえされたことにいら立ったのか、民泊オーナーの佐藤は急に声をあらげた。

「だから、どうしようもないつってるだろ。できることはやってるんだよ。こっちだって好きで民泊やってるわけじゃないんだ。こうしないと食っていけないから嫌々やってんだよ。あんたんとこみたいに、親の金でのうのうと生きてる奴とは違うんだよ!」

民泊オーナーの凄まじい剣幕に、洋之は圧倒されてしまった。二の句が継げず突っ立っている洋之を尻目に、ちっと短い舌打ちを残して、民泊オーナー佐藤は玄関の中に消えてしまった。ばしん、と音を立ててドアが乱暴に閉められる。

洋之は怖くなり、駆け足で家に戻って、ドアを閉め鍵をかけたのだった。

●その後もトラブルが続いたため、やむを得ず取った行動とは? 後編:【「この人たち、うちをゴミ捨て場だと勘違いしてるのよ!」民泊客にゴミをまき散らされた40代夫婦が取った作戦の中身】にて詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。