夫婦のターニングポイント、そしてふたりのとった行動とは?

そんなある日、夫婦は落ち着いて話をする機会が訪れました。きっかけは小学3年生の次女のこと。幸一さんが思い切って切り出します。

「次女も、そのうち塾に入れるんだよね? でも、もう同じことは無理だと思う。長女はここまで頑張ってきたから最後まで応援したい。でも次女は違うルートを探そう。中学受験をしなくても、素晴らしい道はたくさんあるはずだよ」

もちろん洋子さんにとって、それは簡単な決断ではありませんでした。中学受験のメリットを理解しているからこそ、姉妹で教育機会に差をつけてしまうように感じたからです。

しかし家計を破綻させるわけにはいきません。

洋子さんは、それまでほとんど耳を傾けてこなかった高校受験についての話を集め、調べ始めました。さらに、高校受験組の保護者にも積極的に話を聞くようになりました。

すると、公立中学から都立高校や私立高校へ進学し、充実した学校生活を送っている子どもたちが身の回りにもたくさんいることを知ったのです。それまで自分がいかに偏った情報のなかで判断していたかにも気づかされました。

また洋子さんは働き方を変える決断をします。デザインの仕事だけにこだわることをやめたのです。派遣社員として週3日働きながら、残りの日にデザイナーとして業務委託を続けることにしました。いわば「ライスワーク」と「ライフワーク」を切り分けることで、収入の安定を図ったのです。

また幸一さんにも変化がありました。長女の中学受験を完走させるため、月4万円ほどの副業を始めたのです。

さらに次女が高校受験で選択肢を広げられるよう、英語と算数・数学を公文で先取りし、自治体主催の英語キャンプなども積極的に活用すべく情報を集めました。お金をあまりかけずに学べる機会を、目を皿のようにして探したといいます。

現在、おふたりの長女は無事に中学受験を終え、私立中学に通っています。第一志望ではありませんでしたが、自宅から少し遠いものの、1年間の授業料免除資格を得られた学校へ進学しました。

「中学受験を後悔していますか?」

そう尋ねると、洋子さんは首を横に振りました。

「後悔はしていません。でも、もっと早く夫婦でお金の話をすればよかったと思います」
そして少し考えてから、こう付け加えました。

「長女には中学受験、次女には高校受験という選択をしました。でも今は、どちらが正解かではなく、その子に合った道を探したいと思っています」

教育費は数字の問題に見えますが、その実、価値観の問題でもあります。

どこまでお金をかけるのか。何を優先するのか。どんな未来を目指すのか。

教育費の問題は、家計の問題であると同時に、夫婦が人生の優先順位を確認する機会なのかもしれません。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。