脱P&S依存は道半ば 産業向け強化へ前中計ゼロのM&A一転、攻勢へ

全体的な業績は堅調ですが、ブラザー工業が目指すポートフォリオ改革は道半ばです。進捗中の中期経営計画「CS B2027」では、28年3月期までに営業利益1000億円を目指していますが、うちプリンティング・アンド・ソリューションズ(P&S)事業の比率を55%まで引き下げ、同時に産業用領域の売上収益比率を40%以上に引き上げることを掲げます。

つまり、P&S事業への依存から脱却し、工作機械やデジタル印刷機といった産業用領域を第二の柱に育てる計画です。

しかし、この計画はまだ途上にあります。26年3月期のセグメント営業利益を見ると、P&S事業が581億円と全社合計779億円の74.6%を占めます。前期の87.0%からは低下したものの、依然として利益の多くをP&S事業が占めています。また、売上収益に占める産業用領域の比率は32%と、前期比1ポイント上昇したものの、目標の40%にはなお遠い状況です。

【セグメント情報(26年3月期)】

・プリンティング・アンド・ソリューションズ(営業利益:581億円)
プリンター、複合機、ラベルライター、ラベルプリンター、スキャナー

・インダストリアル・プリンティング(同-17億円)
コーディング・マーキング機器、デジタル印刷機、ガーメントプリンター

・マシナリー(同67億円)
工作機械、工業用ミシン

・ニッセイ(同10億円)
ギアモータ、高剛性減速機、歯車

・パーソナル・アンド・ホーム(同60億円)
家庭用ミシン、カッティングマシン

出所:ブラザー工業 決算短信および事業紹介

ブラザー工業は、前回の中計(CS B2024)期間中にM&Aはゼロでしたが、一転して投資を振り向け産業用領域の強化に臨みます。26年1月に工業用ミシンの独コンラート・ブッシュ社からカーシートやエアバッグといった自動車部品向け事業を取得したほか、同年3月には業務用大判プリンターのMUTOHホールディングスを子会社化しました。

28年3月期までの3年間では、M&Aなどの戦略投資に1500億円を投じる計画で、初年度である26年3月期は322億円を実施しました。MUTOHホールディングスの27年3月期計上分の42億円を差し引いても、残り2年で1136億円を執行する見通しです。

もっとも、今期(27年3月期)の予想営業利益は850億円と順調に見えますが、屋台骨はやはりP&S事業です。P&S事業の予想営業利益比率は74.1%と、前期並みにとどまります。M&Aで産業用領域の強化を加速するものの、構造転換の本格化は最終年度に持ち越される公算です。