迎えたゴールデンウィーク
5日当日、靖子はいつもの時間に起きて朝食の準備を始めた。楽しみ過ぎて眠りが浅かったのか、珍しく早起きしてきてしまった誠子は時折台所に顔を出しながら、靖子のことを見張っていた。
「ちゃんと準備はしてるんだろうね? 去年は大したおもてなしもできずに恵たちが可哀想だったよ。わざわざ休みに実家に帰ってきたのに、美味しいご飯の1つも出さないで……! 今年はそんなことないようにしてくれよ」
「はい、わかりました」
食事を作り、掃除をし、ひと通りの準備が整ったころ、車が家の前に停まる音がした。靖子が玄関に向かうと、恵がにこやかな笑顔で入ってきた。
「あらぁ、靖子さん、久しぶりぃ」
「お久しぶりです。どうぞ中に入ってください」
そう言って靖子は恵夫妻を居間に通した。それからしばらくして義弟の大輔もやってきたので親族全員が揃って昼食を取ることにした。
例年、昼過ぎに集まってその日は一晩泊まって翌日の昼前に帰るというのが流れになっている。24時間あまりの辛抱だ。
夜はお酒もたくさん出て宴会のようになるので、靖子は昼は軽めにいこうと思って準備していたかけそばを出した。しかし、さっそく誠子が口を開く。
「ずいぶんと楽したね。ってことは夜はたいそう贅沢なものが出てくるってわけだ。食べずに胃を夜のために空けておこうかしら」
誠子の一言で和やかだった居間の空気が引き締まったが、すぐにその静寂をテーブルを叩く音が引き裂いた。
「文句言うな。作ってくれてるだけ感謝して食えよ。そんなこともできないのか……⁉」
音を立てたのは孝弘だった。孝弘の言葉に誠子は目を丸くしていた。
「な、何だって……?」
「そうやっていつも嫌味ばっかりで気分が悪いんだよ。もうちょっと靖子を労れって」
靖子は慌てて孝弘を止めた。
「別に私は大丈夫だから」
「何? あんた、言いたいことがあるのならはっきり言いなよ。こんな風に息子を利用するような真似して、本当に底意地が悪い……!」
「俺の気持ちだよ。正直、母さんの態度にはもう我慢の限界だよ……!」
孝弘の反論に誠子は呪文のようにこちらを見ながら恨み言をブツブツとつぶやいて蕎麦をすすり始めた。
最悪の雰囲気の中、恵たちは我関せずといった様子で蕎麦を食べている。靖子はどうして急に孝弘が誠子に食ってかかったのかその意味が理解できず混乱していた。
●義母の嫁いびりに20年耐え続けてきた靖子。GW恒例の親族集まりで、夫・孝弘が妻をかばい反撃に出るが、靖子にはそれが余計な火種にしか見えなかった…… 後編【「俺がお前を守る」夫の宣言に違和感を覚えた妻が台所で聞いてしまった“会話”の絶望的な中身】にて、詳細をお伝えします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
