家にいるのに休めない三花

「侑大、ご飯できたよ」

「お、助かる。やっぱり家で働けるって最高だよな」

「うん……」

朝起きてから1秒たりとも、気持ちのオンオフを切り替える時間がない。仕事のことを考えたまま夕飯を作り、食卓についても次の予定を確認する。家にいるはずなのに、ずっと窮屈さが拭えない。

食後、食器を下げたあとで、三花は思い切って口を開いた。

「ねえ、私さ……2、3時間だけでも外で働くのありかなって考えてる」

タブレットをいじっていた侑大が眉を寄せる。

「急にどうしたの」

「少し前から考えてたの。パートとかで家の外に出る時間があったほうが、自分の気持ち切り替えられる気がして」

「今、仕事すごい調子いいよね?」

「うん。でも」

「正直、全く分からないな。順調に仕事が増えてる今、外で働くなんて。しかもさ、パートの時給なんてたかが知れてるし、わざわざ割の悪い仕事する意味ないでしょ」

三花は反論を飲み込んだ。説明したいのに、何をどう話せばいいのか分からない。

そうこうしているうちに、侑大はもう画面に視線を戻している。やがて三花はキッチンに立ち、シンクに沈んだ食器を黙々と洗い始めた。

●夫・侑大の独立を支えるため、アパレルの仕事を辞めて在宅で事務を手伝い始めた三花。最初は新鮮だった夫婦二人三脚の働き方も、仕事が増えるにつれ、侑大の指摘が三花の心に重くのしかかるようになっていく。「外で働きたい」と打ち明けた三花に、侑大が返した言葉とは…… 後編【正論ほど心を削る…逃げ場を失った妻が静かに壊れていく生活と限界のサイン】にて、詳細をお伝えします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。