父の告白に怒り爆発

言われた意味を理解するまでに、数秒かかった。ほっとするより先に、怒りがせり上がってくる。

「は? エイプリルフール?」

「最初は、ちょっと母さんを驚かせるだけのつもりだったんだ。引退してから毎日が退屈でつい……たまには面白いことをしようと……」

「末期がんだって嘘つくのが、面白いこと?」

「ここまで大ごとになると思わなかったんだ。その日のうちに冗談だと言うつもりだった。でも母さんがすぐお前らに連絡して……今さら違うと言えなくなって……」

「それで何日も前から、食欲がないふりまでしてたの? 信じられない」

思わず頭を抱えた伊代に代わって、毅が言った。

「いい年して何やってるんだよ」

「……悪かった」

「悪かったで済むかよ。母さんは、ずっと本気で心配してるんだぞ。姉ちゃんだって、忙しいのに仕事切り上げて飛んできたんだ」

父はうなだれたまま、何も言わない。伊代は情けなさと腹立たしさで、喉の奥が熱くなった。

怒鳴りつけたい衝動に駆られる一方で、父が本当に病気ではなかったという事実に、遅れて安堵が押し寄せてもいた。力が抜けそうになるのを、怒りでどうにか踏みとどまる。

「普通さ、退屈だったからって、そんな嘘つく? お母さんがどんな気持ちで電話してきたと思ってるの」

父は返事をしなかった。うなだれた横顔には、叱られた子どものような後ろめたさがにじんでいる。

「……今すぐお母さんに本当のこと話して」

「伊代、俺は……」

「これは絶対自分で言わないと駄目。本当のことを話して、ちゃんと謝って。じゃないと許さないから」

ようやく顔を上げた父の目には、諦めたような色が浮かんでいた。