実の買ってきたものとは?

それから2週間ほどが経ち、2月は終わりを迎えようとしていたころ、佐都子は腕のなかで泣き叫ぶ美亜をあやしながら、実に激しい怒りを覚えていた。

休みということもあって昼過ぎに起きてきた実は、美容院に行くと言って家を出ていった。根元が真っ黒になったままもう何カ月も放置され、枝毛だらけの髪の毛の佐都子のことが目に入っていないのかもしれないと、実の正気を疑わざるを得ないような行動だった。

美亜がようやく眠ったころ、

「ただいま」

そう言ってリビングに入ってきた実の手には大きな袋があった。実は嬉しそうにかごの中で寝ている美亜に近づき、袋の中を披露する。

「美亜、ほら、これ見て〜。かわいいでしょ〜」

「ちょっと、さっき寝たばっかりだから起こさないでよ」

また勝手におもちゃでも買ってきたのかと思って、佐都子は洗い物をやめて実に近づいた。

しかしそこには佐都子が想像もしていなかった光景が広がっていた。

実の手に抱えられていたのはおもちゃではなかった。透明な箱に入ったひな飾り。お内裏様とお雛様が澄ました顔で並んでいる。

「え……⁉」

思わず佐都子は驚きの声を出した。装飾などを見るからにかなり本格的なものであることがうかがえる。

「ちょ、ちょっとそれどうしたの……?」

「美容室の帰りにショッピングモールに寄ったんだよ。そしたらひな人形が売っててさ。もうすぐひな祭りだし、きちんとしたものをそろえたほうがいいと思って買ったんだ」

実は自慢げだった。

「ち、ちなみにそれっていくらするの……?」

「確か20万くらいだったかな」

「……は?」

「やっぱり初節句だからきちんとお祝いしたいだろ。ちょっと奮発して買ったんだ。なぁ、美亜〜」

「ど、どうして買う前に一言相談してくれなかったのよ?」

佐都子は動揺しながらも実に聞いた。しかし実は悪びれる様子もないどころか、佐都子を小馬鹿にするような薄い笑みすら浮かべている。

「何でそんなことしないといけないんだよ? 娘のためなんだからやって当然だろ? ていうか佐都子こそ、なんでひな祭りの準備をしてないんだよ? そこら辺はさ、親としてちゃんとしてやらないと」