深夜4時のリビングで、佐都子の体力は限界を迎えていた。

うつろな意識の中、腕に抱く美亜の背中をとんとんと叩く。授乳を終えてゲップをさせようとしていたが、なかなか出してくれなかった。

佐都子にとって美亜は念願の我が子だった。子どもが大好きで自分の子供が欲しくてたまらなかった。それでもなかなか妊娠することができず、夫の実と不妊治療にも通った。その結果、結婚してから5年経ってようやく授かることができた子どもだった。

美亜は大切だ。生まれてきてくれて本当によかったと思っている。だが、佐都子は育児がここまで過酷だとは想像できていなかった。

24時間つねに美亜に気を張っていないといけない。3時間ごとに泣かれて、そのたびにミルクをあげて寝かしつけをしなければならず、美亜が生まれてからの3カ月、佐都子にはまともに眠れた記憶がなかった。

ようやく小さくゲップをしてくれた美亜を、佐都子はベッドに寝かせた。そのまま自分もベッドに体を滑り込ませると今まで寝ていたと思っていた実が不機嫌そうに唸った。

「……明日も仕事なのに、こんなのいつまで続くんだよ」

「1歳くらいになったら落ち着くって健診のときに言われたけど……」

「マジかよ……」

実の気持ちは佐都子にもよく分かった。この状況がまだ数カ月も続くのかと思うと愚痴のひとつでもこぼしたくなる。

「……ねえ次、美亜が泣いたら実が寝かしつけてくれないかな? ちょっと私は体力が限界でさ……」

「無理だって。俺は明日も仕事があるんだから。佐都子は昼間に寝れるんだから頑張ってやってくれよ」

「いや、でも……」

思わず声を上げて反論をしそうになったが、あまりうるさくして美亜を起こすわけにはいかない。佐都子は言葉を飲み込んだ。

実は昼間に楽をしていると思っているようだが、昼は昼で授乳したり、おむつを替えたり、家事をしたり、やらないといけないことはたくさんあった。もちろんうかうか昼寝なんてできるはずもない。

実は決して娘への愛情がないわけではないのだろう。一緒に不妊治療も頑張ってくれたし、美亜を妊娠したときは一緒に喜んでくれた。今も仕事から帰ってくれば、いの一番に美亜に話しかけに向かうし、給料日にはおもちゃや洋服を買ってくることも少なくない。

しかしなぜか子育てに関しては非協力的だった。きっと働いている自分と育休中で家にいる佐都子の役割を、きっちり切り分けようとしているのだろう。

だが、そんな実への不満を佐都子は日々募らせていた。