代わりに出世した「51歳女性課長」

それから約2か月が経過した3月中旬に人事異動が発表された。

黒澤社長が言った通り、佐藤専務は本社総務部付へ異動と書かれていた。

一方、佐藤専務の代わりに、あらたに51歳女性の朽木課長が専務に昇格していたことが、社内の噂になった。

 

「見た? 人事の発表」

 同僚の松永さと子が、美乃里を韓国料理のランチに誘った。席につくなりさと子は美乃里にそう言い、探るような目で美乃里を見る。

「見た」

「佐藤専務が飛ばされたのは聞いてたけどね……」

そこまで言うと、さと子は眉間にシワを寄せ、首を振ってあたりに人がいないか確かめてから、おもむろに言った。

「まさか、朽木さんが専務になるとはねえ……」

その様子を見て、美乃里はなんとなく、自分の抱いていた疑問を、さと子も抱いているのだなと感じた。

「朽木さんて、転職してきたのは3年前くらいなのに、いくらなんでも出世が早すぎない? 確かに未経験者ではなかったけど、仕事は雑だし、気に入らない後輩にはきつく当たるし……。そもそも、そんなに実績をあげているわけでもないのにねえ」

美乃里が思い切ってそう言うと、さと子はうなずいた。

「そうだね。まったくダメっていうわけじゃないけど」

「そうそう。その程度だよね」

「私の考えすぎかもしれないけど、今回の人事、ちょっとあやしい気がする」

さと子が言った。

「あやしい?」

「うん。つまり、今回の人事って、佐藤専務の左遷とセットなわけでしょ。一番得したのは朽木さんじゃない?」

「え、じゃあ、まさか、朽木さんが仕組んだってこと?」

美乃里は海鮮チゲを食べる手を止めて、息を吞んだ。

「もちろん、証拠はないよ。でも、もし本当にそうだったら、朽木さんてああ見えて相当な悪女かもしれないよね」

●半年後、A社では退職者が相次ぎ大変な事態に……。後編:【「罠を仕掛けて、セクハラっぽい発言を引き出した」邪魔者を告発して出世した51歳女性を待っていた「正義の裁き」】にて詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。