世界的な株高をおう歌してきた株式市場だが、それだけに今後の展開を見通すことはますます難しくなっている。グローバルで有数の株式アクティブマネジャーでもあるオービス・インベストメンツで代表取締役社長を務める時国司氏に話を聞いた。

──これまでのマーケットをどうご覧になっていますか。

世界金融危機以降の約15年間、世界的に金利は低下を続け、日本もマイナス金利にまで踏み込みました。そしてインフレを契機に、いま再び「金利のある世界」へと局面が転換しています。

金利が下がるということは、割引率が低下することを意味します。つまり、デュレーションが長い資産クラスほど有利に働くため、株式で言えば例えば米国の巨大AI企業やEV企業などに代表される、遠い将来に大きなキャッシュフローを見込むグロース企業が株価上昇の恩恵を受けてきたわけです。

こうした環境が定常化していたため、「どんなに割高でも、成長期待があれば正当化される」という論調が市場を支配するようになっていきました。それでも私は「どんなに良い会社であっても、価格が高すぎれば買うべきではない」と申し上げ続けていました。

──足元ではデフレからインフレへと転換しています。

コロナ禍の到来後、比較的早い段階から、私はインフレが起こる可能性について指摘してきました。その心はいたってシンプルで、コロナ禍によってモノやサービスの供給量が減っている一方、金融緩和でお金の量は増え続けていたからです。言い換えればモノやサービス1単位あたりのお金の量が増えているわけで、それはインフレの定義そのものです。

 そして、インフレによって金利が下げ止まれば、株式市場ではしばらく放置されてきた割安銘柄に再びスポットライトが当たると考えていました。当社のポートフォリオは、市場環境にかかわらず、本源的価値に対して割安と査定した銘柄で構成しています。その結果、実際に大きくアウトパフォームしています。(オービスの旗艦戦略であるオービス・グローバル株式戦略は、直近1年間(2025年2月1日~2026年1月31日)で+46.3%のリターン(運用報酬控除前)を実現。同期間におけるMSCI World Indexのリターンは+19.6%)

不確実性の中でどのように市場に立ち向かうべきか

──環境変化が訪れたことで、どのように市場に向き合うべきかと頭を悩ませる投資家も多いと思います。運用において重要となる考え方をいくつか挙げていただけますか。

当社は創業以来、本源的価値に対して株価が大きく割安な会社に投資することを愚直に実行してきました。この運用哲学が何に賭けているかを突き詰めれば、人間が持つ「欲と不安」です。本源的な価値100が200の価格になるのは人々が欲をかいているから、逆に価値が100あるのに価格が50になるのは不安になっているからです。

この運用哲学が機能しなくなるとすれば人々から欲と不安がなくなる時ですが、人類史上そのようなことは一度もなかったと思いますし、おそらく今後もないでしょう。特定のテーマにベットした運用哲学はそのテーマが消えれば機能しなくなりますが、人の欲と不安にベットするような普遍的な哲学は時代を超えて機能し続けると考えています。

この哲学は売買のタイミングにも応用できます。価値に近づいてきたら売る、安くなってきたら買う——この繰り返しです。本源的価値を把握せずに「価格が2倍になったら売る」という投資行動では、再現性のある結果が得られるとは言い難いでしょう。

次に重要なのは、長期的にさまざまなサイクルを越えて投資対象を分析する視点です。短期的に逆風になることがあっても、サイクルをまたいで確信度の高い投資対象に絞っていれば、良好な結果につながる可能性が高まるものと考えます。

──貴社は投資家に対してどのようなソリューションを提供されているのでしょうか。

当社は上記の運用哲学に基づいた株式戦略を中心に提供しています。割安な銘柄に投資するというと、バリュー投資を想像されるケースが多いのですが、PERやPBRで見た一般的なバリュー投資とは少し異なります。PBRが0.1であっても本源的価値に対して安くなければ買いませんし、逆にグロース銘柄であっても価値に対して割安であれば投資します。

その好事例として、近年投資額を大幅に増やしたのがGoogleの親会社であるAlphabetです。独占禁止法への抵触懸念やChatGPTを運営するOpenAIとの競争から株価が調整していた局面でポジションを構築し、現在は当社ポートフォリオの中で上位の組み入れ比率を占めるまでになっています。

この背景には、検索広告とYouTube広告という基幹ビジネスの価値だけで現在の時価総額とほぼ同等であるという当社の分析結果がありました。当社の分析が正しければ、ChatGPTと比肩する生成AIサービスのGeminiや、傘下の自動運転車開発企業Waymo、量子コンピューティングといった残りのすべての有望な事業が実質ゼロで評価されているわけです。Alphabetは一般的にはバリュー銘柄とは目されないでしょうが、このように当社では価値に対する割安さを評価して投資に至っています。