中外製薬なぜ強い? メガファーマ傘下で収益盤石、開発専念の好循環
では、なぜ中外製薬の業績は安定しているのでしょうか。中外製薬の安定性はロシュとの関係が寄与しています。
ロシュはスイス発の製薬企業です。世界的メガファーマの一角で、25年のグループ全体の売り上げは12兆3000億円にも達しました。うち医薬品部門は9兆5000億円と世界トップクラスで、米ファイザー(同9兆2000億円)や米メルク(同8兆7000億円)といった競合を上回ります(出所:各社の財務報告)。
※ロシュは1スイスフラン=200円、ファイザーおよびメルクは1米ドル=150円換算
そして、中外製薬はロシュの子会社です。議決権の6割をロシュが握ります。しかしながら、中外製薬は独立性を維持するという珍しい形態をとっています。中外製薬は、ロシュグループ唯一の国内医薬品メーカーとして主に日本における開発や販売を担う一方、ロシュはその他の海外地域で展開するという関係です。
ロシュとの提携における強みは協業です。中外製薬は自社開発で一定の有意性を確認すると、ロシュとの共同開発に移ります。共同開発下では、研究開発費は展開エリアで案分されるため、グローバルの大部分はロシュの負担です。したがって、中外製薬は費用を抑制しながら世界展開を進めることができます(原則として日本・韓国・台湾における開発費は中外製薬が負担)。
さらに、開発の進展に伴い段階的な収益をロシュから受け取るほか、販売後はロシュからロイヤリティ収益も生じます。ロシュからの収益は、25年12月期は全体の57.6%を占めました。開発から販売までロシュのプラットフォームを活用できることは、中外製薬の安定性につながっています。
もっとも、中外製薬の強さはロシュとの関係だけでは説明できません。医薬品の開発ハードルの高さは不変であり、事業を成長させるには連続的に開発を成功させ「特許の崖」を乗り越える必要があります。このため、医薬品企業は高い技術力が求められます。
そして、中外製薬の成長を支えているのも技術力です。同社の自社開発品は世界110カ国以上で承認され、6品目は9回にわたり米国食品医薬品局(FDA)から「画期的治療薬」に指定されています(25年2月末)。
技術は加速しており、グローバル販売の年平均本数は01年~10年が0.1本、11年~20年は0.3本、直近の21年~25年には0.6本まで増加しました。31年以降は、毎年1本を販売する体制を目指しています。
そもそも、ロシュとの特別な関係も中外製薬に技術がなければ成立は見込めないでしょう。中外製薬は、自社の開発をロシュとの戦略的な提携で加速させ、得られた収益を再投資することで高い成長を実現しています。