各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、中国銀行のデータをもとに解説。

中国銀行の投信売れ筋ランキング(窓口販売件数)の2025年11月のトップ2は前月と同じ「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:世界のベスト)(設定はインベスコ・アセット・マネジメント)、「ROBOPROファンド」(SBI岡三アセットマネジメント)だった。このトップ2は5月以来7カ月間にわたって続いている。前月第3位の「三菱UFJ純金ファンド」(三菱UFJアセットマネジメント)は第4位に落ち、前月第4位だった「ニッセイ・パワーテクノロジー株式ファンド」(愛称:パワテク)(ニッセイアセットマネジメント)が第3位に上がった。また、トップ10圏外から第9位に「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」(フィデリティ投信)、第10位に「小型ブルーチップオープン」(野村アセットマネジメント)がランクインした。

 

「世界のベスト」と「ROBOPRO」はなぜ選ばれた?

中国銀行の売れ筋トップ2を継続している「世界のベスト」と「ROBOPROファンド」は、2024年末まで市場をリードしてきた「米国大型テクノロジー・グロース株投資」とは一線を画した運用をしているファンドだ。2025年4月の「トランプ関税ショック」以降に「マグニフィセント・セブン」(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)をはじめとした大型テクノロジー株の成長の背景として注目されたAIの成長見通しが過大ではないかという懸念が強まって株式市場の調整圧力となっている。12月11日引け後に予想を上回る決算を発表したにもかかわらず、ブロードコムが12日に11%を超えるほど急落したことなどは、AI関連銘柄の割高さに市場が神経質になっていることを象徴する出来事だ。このような「AI相場の反省」を踏まえて、AI関連以外の魅力的な銘柄・資産に投資しているファンドといえる。

「世界のベスト」の組み入れ上位銘柄(2025年11月末時点)は、英国の投資会社「3iグループ」、カナダの鉄道会社「カナディアン・パシフィック・カンザス・シティ」、香港の保険会社「AIAグループ」など、米国テクノロジー大手とは異なる銘柄群で構成されている。組み入れ上位10銘柄の中には米「マイクロソフト」や「テキサス・インスツルメンツ」、オランダの「ASMLホールディングス」などテクノロジーや半導体に関連する企業も含まれるが、運用ポートフォリオは業種別にみて「資本財・サービス」が26.0%、「金融」が24.5%で全体の半分を占める。「情報技術」は17.9%という比率だ。

「ROBOPROファンド」も「米国株式」(VTI:全米約3500銘柄に投資)は45.6%で、それに匹敵するほどの比率で「新興国債券」を38.7%保有している。「米国株式」は7月時点では20%以下の水準に組み入れ比率を落とすなど、その時々の市場環境に対応して大胆に資産の配分比率を変更し、基準価額を安定させている。「VTI」の上位構成銘柄(2025年9月末)は、エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アルファベット、アマゾン、メタ、ブロードコム、テスラなど「マグニフィセント・セブン」に重なる8銘柄で約33%を占め、ITセクターへの投資比率も38.0%になる。ただ、その投資比率を調整し、半分以上を「米国株式」以外の資産へ投資している。

このように売れ筋のトップ2では、市場を牽引してきた「AI関連株」に対して割高感が台頭していることを察知したように、「AI関連以外」に投資対象をシフトしているようにみえる。もちろん、売れ筋上位の中には、AI関連株が組み入れ上位銘柄に並ぶ「One/フィデリティ・ブルーチップ・グロース株式ファンド」、「FANG+インデックス・オープン」、「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド」もランクインしている。警戒感もありつつ、一方でAI関連株の中長期的な成長に期待する投資家も決して少なくないということだろう。