有名な「遺産の90%はS&P500のインデックスに、10%は米国短期国債へ」の意味するところ

もうひとつ印象的だったのは、やはりバフェット氏が自分の妻に宛てた遺言でしょう。有名な話なので、ご存じの方も多いと思いますが、要するに妻はバフェット氏のような投資のプロではないので、企業価値を見極めることはできません。そのためバフェット氏は、「(妻の受け取る)遺産の90%をS&P500で、残りの10%は米国の短期国債で運用する」ように伝えたという話です。

これに対する反論は、いろいろと考えられます。

「米国人はそれでも良いが、日本人は最終的に円で決済しなければならないので、すべてS&P500で運用したら為替リスクをモロに被ってしまう」とか、「S&P500が好調だったのは過去の話で、これから先は分からない」、あるいは「米国株一極集中投資は危険」といったことですが、バフェット氏が妻に宛てた遺言は、初めて投資をする人たちにとっては示唆に富んだアドバイスだと思います。

投資が趣味とか、個別銘柄を選別する目に自信があるという人ではない、ごく普通の人にとっての投資は、インデックス運用で十分ということです。

もし個別銘柄投資をしているなら、自分の日本株ポートフォリオが今年に入って、どの程度、値上がりしたのかを計算してみて下さい。11月21日時点で、東証株価指数は年初から19.61%、日経平均株価なら23.70%値上がりしています。保有している日本株ポートフォリオの値上がり率が、これらの数字を上回れていない人は、個別銘柄投資などせずに、インデックスファンドを買った方が合理的です。

銘柄を選んで個別銘柄投資をするのは、よほどの手練れです。投資未経験者が資産形成をするのであれば、株式に関してはまずインデックス運用から始めるのが無難であることを、バフェット氏は教えてくれているのだと思います。

 

金融ジャーナリスト 鈴木 雅光氏
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。