受託者責任、透明性、投資教育が不可欠


木村: 日本のウェルスマネジメント業界が米国のRIAモデルから学べる点はありますか?

エミル:米国の経験が示しているのは、受託者責任、透明性、そして投資教育こそが業界の持続的成長に不可欠だということです。RIAが顧客利益を最優先にする仕組みが信頼を生み、長期的な顧客関係を築いています。

ジェイク:また、教育と制度の両面の高度化が重要です。今日の米国では投資家への教育を支える仕組みと、リスク管理を組み込んだファンド形態・デジタルプラットフォームの導入が、オルタナティブ投資の民主化を支えています。日本でも同様の環境整備が進めば、プライベート市場への健全なアクセスが広がるはずです。

木村:今後、プライベート市場はどのように進化していくと見ていますか?

ジェイク:今後は「セミリキッド型商品」が市場をリードするでしょう。つまり、非公開市場のリターン特性と一定の流動性を両立させる構造が求められているのです。

エミル:一方で、十分な運用経験やスキルを有していない運用会社の乱立や流動性のミスマッチ(原資産とファンド形態との間で流動性のギャップが生じるケース)など、新たな課題も生まれています。

アドバイザーには、マーケティング資料の裏側にある各マネジャーの運用哲学やガバナンス体制を見抜く力が求められます。市場の成長と健全性を両立させるためには、専門的な助言と慎重な判断がますます重要になるでしょう。

木村:今回の対談を通じて改めて感じたのは、米国において現在のようにプライベート資産が個人投資家にも浸透するまでには、長年にわたる法規制の整備、新たな投資スキームの開発、そしてテクノロジーに基づくプラットフォーム企業の登場といった複数の要素が積み重なってきたということです。

また、RIA業界は高い専門性をもって顧客の資産全体を俯瞰し、受託者責任に基づきプライベート資産を組み入れています。その背景には、高度な運用を支える制度的基盤と専門チームの存在があります。

一方で日本では、プライベート資産への投資を本格的に扱えるアドバイザーはまだ限られているようです。今後は、規制当局、法曹界、プラットフォーマー、そしてアドバイザーが一体となって、健全で透明性の高い産業を育てていくことが重要となります。専門性と信頼に基づいた日本のアドバイザリー文化が形成されていくことを期待しています。

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