生産性改善でディスプレイ復活 半導体向けガラスはAI追い風

まずは概要です。日本電気硝子は特殊ガラスの大手メーカーです。エレクトロニクス向けや自動車向けに、高い機能性を持たせたガラスやガラス繊維などの複合材を提供しています。

【製品別の概要】

日本電気硝子の製品別の概要
 

足元の好業績をけん引しているのは主に電子・情報の製品群です。ディスプレイは23年まで不振でしたが、不採算拠点の整理といった構造改革および値上げを実施し、24年ごろから上向きます。今期(25年12月期)は、在庫が払底した影響から販売を伸ばせないといったトラブルに見舞われたものの、構造改革や値上げの効果から損益が大きく改善しています。

また、ディスプレイ事業の好調は全電気溶融炉への転換も効いています。従来のガス燃焼炉より使用エネルギーを抑制でき、採算の向上が期待されます。全電気溶融炉の導入比率は2018年で2割程度、2023年で36%でした。全社的な導入には課題が残る一方、ディスプレイ事業においては転換が進んでおり、25年上期で7割前後まで上昇しています。

さらに、電子デバイスも好調です。主力が半導体用サポートガラスで、生成 AI などを背景に販売が伸びています。半導体用サポートガラスは15年に開発の比較的新しい製品ながら、世界シェア70%を獲得しており、日本電気硝子の重要な収益源となっています。半導体向けにおいては、検査工程で用いるプローブカード用基板を24年末から量産出荷を開始しており、こちらの貢献も予想されます。

これらの影響から、日本電気硝子は利益率が大幅に向上しています。今期の営業利益率は、前期の2.0%から10.3%へ5倍以上の改善を見込みます。これは競合を大きく引き離す水準です。

【主なガラスメーカーの予想営業利益率(25年度)】

・日本電気硝子:10.3%
・AGC:5.9%
・セントラル硝子:4.9%
・日本板硝子:3.6%
※日本電気硝子とAGCは25年12月期、その他は26年3月期
※AGCと日本板硝子は国際会計基準、その他は日本会計基準

出所:各社の決算短信

現在は好調ですが、実はこれまでは不安定な状況が続いていました。過去10年で2度の最終赤字と1度の営業赤字を経験しています。原燃料の高騰による採算の悪化や、構造改革に伴う損失などが損益を圧迫しました。足元の株価の高騰は、業績の急改善による見直し買いという面もあるでしょう。

日本電気硝子の業績(2015年12月期~2025年12月期)
 
出所:日本電気硝子 決算短信より著者作成