各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、野村證券のデータをもとに解説。

野村證券の投信売れ筋ランキングの2025年8月は、トップに「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」が立った。同ファンドは6月に第9位だったが、7月に第2位に上がり、ついにトップになった。前月トップの「野村インデックスファンド・日経225(愛称:Funds-i日経225)」は第2位に後退した。また、前月第7位だった「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)」が第5位に上昇し、トップ10圏外から「フィデリティ・米国株式ファンド Dコース(分配重視型・為替ヘッジなし)」が第10位にランクインした。前月は第10位だった「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」はトップ10圏外に落ちた。

 

分配金へのニーズが強いもののトータルリターンを評価

8月の売れ筋でトップになった「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」は、8月の分配金も7月に続いて1万口当たり300円を実施。分配金利回りは28.05%となり、毎月決算型の中で利回り水準がトップ3に入っている。投資家の間で分配金に対する強いニーズがあることをうかがわせる動きだ。

また、第10位にランクインした「フィデリティ米国株式ファンド Dコース(分配重視型・為替ヘッジなし)」は3カ月決算のファンドだが、8月に1万口当たり750円の分配金となり、過去1年間の分配金利回りは24.49%になっている。この分配金も高い水準にある。同ファンドはNISA成長投資枠の対象ファンドであるため、NISA対象外である「フィデリティ・グロース・オポチュニティ・ファンド Dコース(毎月決算・予想分配金提示型・為替ヘッジなし)」より実質的には高い分配金利回りを得られている。

この2ファンドに共通しているのは、分配金の原資に債券や高配当株などインカム収益を見込んでいないことだ。株価の上昇が期待できる銘柄でポートフォリオを構築し、基準価額が上昇した部分の一部を分配している。その点では、8月のランキングで順位を第5位に上げた「東京海上・宇宙関連株式ファンド(為替ヘッジなし)」もパフォーマンスの面では2025年に際立って優れた成績を残している。たとえ分配金の払い出しが少ないファンドでも、パフォーマンスの優れたファンドは、しっかり評価されている。

このような好成績のファンドが売れ筋として評価される流れが定着しつつある背景の1つには、毎月決算型ファンドに「予想分配金提示型」が増えてきたことがある。分配金を求める投資家であっても、分配金のために高配当株などに投資するファンドを選ばず、純粋に株価に上昇期待の持てるポートフォリオで運用するファンドを選ぶ傾向が強くなってきたのだ。

従来、毎月決算型ファンドの定番は、高利回りの債券ファンドやREITファンド、公益株や高配当株などのインカム系だったが、今では、成長株投資のファンドも毎月決算型でラインアップされるようになった。つまり、分配金の多い少ないではなく、値上がり益も加味した「トータルリターン」で運用成績が評価される流れになってきているということだ。