実現が視野に入ってきた夢のような次世代エネルギー技術

次世代エネルギーとリサイクル技術のビジネスチャンスについて考えてみたいと思います。

ここ数年AI(Artificial Intelligence=人工知能)が日常生活や仕事等様々な場面で普及しており、今後も同様の傾向が継続すると仮定するとエネルギー安全保障の観点からも重要な要素だと考えています。

次世代エネルギーというと、化石燃料に頼らない自然由来のエネルギーである太陽光、風力、地熱等を想像すると思われます。今回のテーマで取り上げるのは核融合技術を利用した『核融合発電』についてです。核融合発電とは、原子力発電で利用される核分裂とは異なり放射性が高いウランなどの物質は利用せず、自然界(海水)からほぼ無尽蔵に調達できる重水素と核融合発電の稼働によって稼働後は炉の中で自己生成できる三重水素の反応によってエネルギーを引き起こしそのエネルギーでタービンを回す発電のことです。地上でこの発電を起こす条件としては約1億度の高温で、10気圧程度の高密度で、長い時間プラズマを閉じ込めることです。様々な発電方式、また同じ発電方式でも設計思想が異なるものもあり、各社がしのぎを削っています。いずれにしても安定稼働すればエネルギーコストが安価でかつ稼働による暴走リスクが極めて低く、地球環境負荷に貢献しうる夢のような次世代エネルギー技術です。

発電の基本的な流れは以下の通りです。
1,燃料の準備
2,プラズマ化
3,磁場閉じ込め(磁場閉じ込め方式のみを想定)
4,核融合反応の発生
5,熱エネルギーの回収

1の工程は先に述べた通りであり、2以降の工程も含めて核融合発電の歴史は70年以上前からの研究成果の賜物であるということです。

主流、非主流いくつかの発電方式がありますが、ある方式では3,磁場の閉じ込めと5,熱エネルギーの回収が今後重要になってくる工程です。3,磁場の閉じ込めにおいては電気抵抗をゼロにする超電動の状態(≒リニアモーターのイメージ)が必要であり、超電導コイルが利用されます。この分野においては日本の電線メーカーの活躍が期待されます。

また5,熱エネルギーの回収においては、ブランケットといわれる金属膜が大事になってきます。炉の中で高温の物質(中性子)を集めて、そのエネルギーをうまく取り出して活用するためのものです。特にこの金属膜については従来は固体金属で想定されていたものを液体金属で設計することにチャレンジしています。一方で液体金属には課題もあります。常時循環出来るかどうか、また炉壁との相性などです。

様々な観点で課題はありながらも電線分野における技術力、金属加工における技術力及び金属リサイクルにおける技術力をもって同分野での活躍に期待しています。

金属においては鉱物源そのものや精錬加工された原料含めて日本は輸入に依存している点では、いかにリサイクル技術を高め、経済合理性を担保できるかが重要になってきます。当初、同発電の稼働は2040~ 2050年くらいの目線でみられておりましたが、初号機での発電を2034年に見据えて動き出している企業もあります。

何をどうしたらよいか分からないサイエンスリスクのフェーズから、やるべきことは整理できあとは必要な投資をふんでいくエンジニアリングリスクのフェーズに移行しているとのことです。

まさにいま海外企業との開発競争の中でも資金調達が重要な時期にさしかかっており、海外の企業は年金やインパクト投資家も同事業に拠出しているとのことで、日本においてもそのような長期のリスクマネーが必要になってきます。

20年も30年も先かと思われた同技術の社会実装が少し現実味のある時間軸まで近づいた気がしておりわくわくしています。当社『ザ・2020ビジョン』のコンセプトである『この先の日本に起こる変化をしっかり見通し、5~ 10年先を見据えた運用』のフォーカスにも入ってきた印象ですので、引き続き同技術の進展及び社会実装をみていきたいと思います。