米ネットフリックスがWBCを独占中継、革新的な通信技術への期待、ゲーム産業にもプラスの影響
米ネットフリックスがWBCを国内で独占中継
米動画配信大手のネットフリックスは、26年3月開催のワールド・ベースボール・クラッシック(WBC)の日本国内での独占配信権を獲得したことを8月に発表した。スポーツコンテンツの放映権料が世界的に高騰するなか、日本のテレビ局は放送権の獲得に至らず、放映権料の上昇を踏まえたサービス価格の自由な設定が可能なネットフリックスが契約を結んだ。日本のテレビ局の場合、NHKは視聴者から受信料を徴収し、民放各社においては地上波は無料で視聴でき、視聴率および視聴者層に応じて、広告主から広告料を得る。放映権料を含めた番組制作コストの上昇が大きくなる場合、広告主に対して値上げできればいいが、放映権料上昇を理由にした値上げは難しい状況。なお、WBCに限らず、FIFAワールドカップやオリンピック・パラリンピックなども大会を経るにつれて放映権料が上昇している。
日本の放送局、スポーツコンテンツの放映権獲得には資産活用が必要か
現在の日本のテレビ放送業界の事業モデルでは、今後、国際的なスポーツコンテンツが日本の地上波テレビで放送される機会が少なくなる懸念がある。日本の民放各社にとっては、スポーツなどの放映権獲得のためには、各社が多く持つ政策保有株式の売却など資産活用が求められる。
新たな通信技術活用に期待、野球人気が世界で広がればゲームなどにもプラスの影響
個人的な希望だが、ネットフリックスを通して有料でWBCを視聴することになるのなら、これまで以上にワクワクする映像など高度な視聴体験でWBCを楽しみたい。例えば、NTTが推進する「IOWN(InnovativeOptical and Wireless Network)」の活用に期待したい。「IOWN」は革新的な光とワイヤレスのネットワーク技術構想で、「大容量」と「低遅延」の特性を活かして、高解像度な中継映像だけでなく、選手のバッティングやピッチングなどをさまざまな角度からの視点に切り替えることができる自由視点映像なども届けることができる。高速容量かつ低遅延に安定したデータ伝送を実現し、電力消費も劇的に削減できるという技術。すでに、昨年9月に読売新聞社および読売巨人軍などとともに「APN IOWN1.0」(注)を活用した実証実験が済んだ模様。
ところで、野球は日本では人気の高いスポーツだが、世界的にみると、サッカーのファン人口の35億人に対して、野球は5億人にとどまると言われる。来年3月開催のWBCで、「IOWN」が活用され、ライブ感が盛り上がれば、野球のファン人口拡大にとってもプラスに働こう。世界で野球人気が高まれば、日本の存在感が大きいゲーム産業などのビジネス拡大にも貢献すると思われる。
(注):「APN IOWN1.0」とは、IOWN構想の第一弾商用サービスであるオールフォトニクス・ネットワーク(APN)のこと。通信ネットワークの全区間で光を専有し、電気信号への変換を行わないことで、従来のネットワークと比較して遅延を200分の1に、ゆらぎをゼロに低減した高速・大容量、低遅延サービス。