「ネピア」の製紙メーカー、生産は世界首位級 円安はマイナス影響
王子ホールディングスは世界トップクラスの製紙会社です。1873年に渋沢栄一が主導して創業し、国内の洋紙生産の8割を担う大企業へと成長します。戦後の財閥解体では十條製紙(現・日本製紙)と本州製紙の3社に分割されますが、うち本州製紙とは1996年に合流しました。持分法適用会社には三菱製紙や中越パルプ工業、岡山製紙などをもち、紙や板紙の生産量は世界でも首位級です。
【主な製紙会社の売上高(25年3月期)】
・王子ホールディングス:1兆8493億円
・日本製紙:1兆1824億円
・レンゴー:9933億円
・大王製紙:6689億円
・北越コーポレーション:3057億円
出所:各社の決算短信
主要な事業は「生活産業資材」で、25年3月期は連結売上高の45.0%を占めました。段ボールや紙器といった産業向けの製品を製造するほか、家庭用の製品も手掛けます。家庭用は「ネピア」ブランドで、「鼻セレブ」などのティッシュや、トイレットペーパーなどを製造します。
もっとも、利益の柱は「資源環境ビジネス」です。25年3月期は連結営業利益の45.1%を占めました。紙の原料となるパルプを製造し、国内外で販売しています。また東京都の約3倍にもなる広大な森林を世界で保有しており、パルプ原料や木材も生産します。さらに、再生可能エネルギー発電も事業範囲です。
【セグメント情報(25年3月期)】
※業績はグループ本社費の配賦後(グループ本社費は26年3月期から「その他」に集約)
※ワルキ社およびIPI社は26年3月期から「生活産業資材」へ移行
王子ホールディングスで知っておきたいことは、円安は基本的にマイナス要因ということです。原料となる木材チップや燃料などを輸入する関係から、円安はコストを増加させます。連結営業利益における対米ドルの為替感応度は、1%の円安が6.3億円の減少となる計算です(26年3月期見通し)。
なお、資源環境ビジネスは事情が異なります。パルプなどをグローバルに販売する関係から、円安は増益要因です。また、パルプといった原料の高騰は紙製品の製造にはマイナスですが、パルプを販売する資源環境ビジネスにはプラスに働きます。この構造から、資源環境ビジネスの利益はその他のセグメントと逆相関になりやすい傾向にあります。