遺族年金の男女差解消へ、20年かけて段階的に

遺族厚生年金については現行制度で男女間に大きな差がある。一例を挙げると、女性は30歳以上で死別した場合は無期給付だが、男性は55歳未満で死別すると給付がない。

改正後は男女共通のルールとなり、60歳未満で死別した場合は原則5年間の有期給付となる。ただし、配慮が必要な場合は5年目以降も給付が継続される。また、従来の有期給付の収入要件(年収850万円未満)は廃止され、年金額の増額措置も導入される。

遺族基礎年金についても変更される。現行制度では父または母が遺族基礎年金を受け取れない場合、子どもも受け取れないケースがある。この仕組みが見直され、28年4月からは遺族基礎年金を受け取れない父または母と子どもが生計を同じくしていても、子どもは遺族基礎年金を受け取れるように制度が改められる。

なおこれらの改正の影響を受けず、現行制度と変更のない人もいる。具体的には、60歳以上で死別した人、子ども(※)を養育する間にある人の給付内容、改正前から遺族厚生年金を受け取っていた人、28年度に40歳以上になる女性が該当する。

※18歳になった年度末までまたは障害の状態にある場合は20歳未満

賃金上限の引上げで高所得者の年金も現役時代に見合った水準に

厚生年金等の保険料や年金額の計算に使う賃金の上限も現行の月65万円から75万円に引き上げられる。具体的には、68万円(27年9月~)、71万円(28年9月~)、75万円(29年9月~)と段階的に変更になる。

これにより現行制度では上限額を超える人が賃金に応じた保険料を負担することになり、現役時代の賃金に見合った年金を受け取れるようになる。なお、会社員男性の約10%が該当する。

例えば賃金月75万円以上の人は、保険料(本人負担分)が月5万9500円から同6万8600円に増加する。その期間が10年該当する場合、年金額(終身)は月約5100円※増えることになる。

※年金課税を考慮すると月約4300円の増加