シニア世帯の所得は「その他の世帯」の約半分

調査によると、高齢者世帯※の平均所得金額は304万9000円となっている。この金額はその他の世帯(656万円)の約半分にとどまる。

なお、比較する際に注意したい点は世帯人数だ。高齢者世帯の平均世帯人員は1.54人であるのに対し、その他の世帯は2.62人と約1.7倍。この違いを考慮すると、単純な所得金額の比較だけでは生活水準の違いを正確に捉えることはできないだろう。

生活水準については、世帯人員数が少ない方が生活コストが割高になる。そのため、世帯人員数の違いを調整した値(等価可処分所得)でも見てみよう。なお、可処分所得とは、収入から税金や社会保険料等を除いたいわゆる手取りのことだ。

※65歳以上のみ、または65歳以上のほか18歳未満の未婚者がいる世帯

高齢者世帯の所得を表した図表
 
出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書」
 

等価可処分所得で比較すると、高齢者世帯の平均は221万1000円、その他の世帯は325万9000円。この比較では高齢者世帯の所得はその他の世帯の約7割となり、単純な所得比較よりも差が小さくなることが分かる。

調査結果から高齢者の経済状況について集約すると、以下のような傾向が分かる。

・所得面では若年層・現役世代と比較して低い水準にあるものの、世帯人員数を調整して見た場合、差はやや縮小する

・経済状況については、約7割が「心配がない」と回答し、自身が感じる経済的な安心感は比較的高い

高齢者の所得と主観的な経済状況の評価にはギャップがあるように見える。これは、高齢者世代の持ち家比率の高さや、現役世代に比べて大きな出費(教育費など)がない生活スタイルなどを反映している可能性がある。

しかし同時に、約3割の高齢者が経済的な不安を抱えているという事実も見逃せない。65歳以上となると、日々の生活費を年金に頼る人も増えてくる。年金頼みで生活は維持できるのか、高齢社会が進む中で対策を講じていく必要があるだろう。

●年金だけで暮らしていけるのか。気になる所得については後編「65歳以上世帯の「所得」はいくらか?ボリュームゾーンを探る【50万円以下~2000万円】」にて詳報する。 

調査概要 白書名:令和7年版高齢社会白書 調査主体:内閣府 公表日:2025年6月10日