外資系大手スーパーが地域全体の賃金水準を押し上げ

これに加えて、地域経済の活性化も大きい。もともと群馬県太田市は「大手自動車メーカーの城下町」として有名だったが、すでに60年ぶりとなる国内新工場が建設中(2027年稼働予定)である。

さらに、群馬県の前橋市と明和町へ外資系大手スーパーが出店したことが、地域全体の賃金水準を押し上げていることもある。

背景には、その外資系大型スーパーが、時給1500円と高い賃金水準を設定して人材を募集していることがある。大型店ゆえに募集も多く、「うちのバイトさん、パートさんをとられては困る」となった地元店舗は、自ずと時給を上げざるを得なくなっている。

こうした小売業以外の産業に目を向けても、群馬県の製造業基盤の強さが、人手不足を通じて賃金上昇圧力となった可能性もある。

そして群馬県は、本社機能移転の優遇策も展開している。首都圏から近く、地盤が安定していて地震に強いという特性を活かし、大手企業の本社機能を誘致しているのだ。

こうした群馬県のモデルは、地域特性を活かした産業誘致と、実効性の高い補助金制度の組み合わせにより、地方における賃金上昇を実現できることを示している。

新型インフレ

 

著者名 永濱 利廣 

発行元  朝日新聞出版

価格 1045円(税込)