物価は上がるのに、賃金はなかなか上がらない。

このままでは生活が苦しくなるばかり……そんな声も聞こえるなか、物価と賃金がともに上がる“好循環”は、本当に生まれるのでしょうか。

個人消費を促すには現金給付か、消費税減税か。地方で実質賃金アップを実現させた数少ない成功例など。いま注目すべき経済処方箋を、第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣氏が解説します。(全2回の2回目)

●第1回:現金給付 or 消費税減税 景気刺激の効果が大きいのはどっち…データが裏付ける正解は?

※本稿は、永濱利廣著『新型インフレ 日本経済を蝕む「デフレ後遺症」』(朝日新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

実質賃金がプラスだった群馬と大分

2023年、都道府県別実質賃金でプラスを達成したのは群馬県と大分県のみだった。特に群馬県の「+0.6%」を些少と思うのは間違いだろう。あとの45都道府県は軒並みマイナスだったのである。その成功要因から、補助金制度の重要性を見てみよう。

中小企業向けの賃上げ補助金制度

群馬県のプラスは複数の施策と環境が重なった結果だが、大分県と共通する部分としては中小企業向けの賃上げ補助金制度がある。これまでも政府の賃上げ優遇税制はあったが、税制優遇は基本的に黒字企業にしか適用されない。つまり、全企業の3分の2を占める赤字企業には恩恵が及びにくいのである。

その点、補助金であれば企業の収益状況に関係なく支給されるため、より広範な効果をもたらしたと言えよう。