家計誘導策 参考にしたい韓国のキャッシュレス決済課税控除

韓国のキャッシュレス決済比率は99%に達し、日本の約4割を大きく上回っている。この成功を支えた政策の一つが、キャッシュレス決済の所得控除制度である。端的に説明すれば、年収の4分の1を超えるキャッシュレス決済額を課税所得から控除する仕組みだ。

たとえば年収400万円の場合、100万円を超えるキャッシュレス決済額が所得控除の対象となるのだから、控除目当てでキャッシュレス消費を増やす人が増えるのも頷ける。

この制度導入の目的は3つある。

① 経済活性化:キャッシュレス決済の促進で消費が活発になる
② 税収の安定化:現金取引の減少が脱税防止につながる
③ 社会インフラの整備:キャッシュレスの普及で、国民生活の利便性が向上する

仮にこれを日本で導入する場合の障壁となりそうなのが、小規模店舗における導入コストと手数料負担だろう。韓国では、決済システムへの政府支援に加えて、「消費者が使う」という前提が事業者の導入を促進した。仮に日本でも導入するのであれば、個人のメリットだけでなく、事業者側のメリットや利便性も考えなければならないかもしれない。

最近では日本でも、レジ更新時にリース方式でキャッシュレス対応端末を導入するなど、普及に向けた動きが進んでいる。キャッシュレス化は事業者にとってコスト増要因だが、新紙幣に切り替わる中、必要な初期投資とも言える。消費機会の損失を避けようと対応は日々進みつつあるといえよう。

ただ、日本ではキャッシュレス決済にこだわる必要はないだろう。たとえば、内閣府「地域の経済2019」によれば、一人当たり医療費と健康度の間には負の相関があり、健康度の改善が一人当たり医療費の抑制につながる可能性を指摘している。であれば、たとえば健康寿命を延ばすのに貢献するようなモノやサービスが特定できれば、そうした支出に関して所得控除を認めることなどによって、結果的に個人消費の活性化と医療・介護費用の増加抑制といった一石二鳥の効果が期待できるようになるかもしれないだろう。