包丁を向けられた母親

そんなある日のこと。いつものようにお金を要求してきた美咲さん。そこで母親は「うちにはもうお金はありません」と断固拒否の態度を取ってみました。すると逆上した美咲さんは台所にある包丁を手に取り、その刃先を母親に向けました。

「え?」

その話を聞いた筆者は思わず驚きの声を上げてしまいました。

「それでその時、警察は呼んだのでしょうか」

「いいえ、警察は呼びませんでした。その時は平日の昼間だったので主人は仕事で不在でしたし、あまりの出来事に理解が追い付かず、気が動転してしまったので。お金を渡せばとりあえず長女は落ち着くので、いけないとは思いつつお金を渡すしかありませんでした」

「それは大変でしたね……」

筆者はそう答えるのが精いっぱいでした。

美咲さんのお金使いが荒くなってきたので何とかしたい。しかし、母親の言うことは聞かない。父親に頼ることもできない。困った母親は、美咲さんの通う心療内科の主治医に相談。主治医から美咲さんに「お母さんも困っているようなので、お小遣いの範囲内でやりくりをするようにしましょう。洋服は上手に使い回せば、そう何着も買う必要ないと思いますよ」といったことをアドバイスしてもらいました。

ですが、それはまったくの逆効果でした。

主治医の忠告に腹を立てた美咲さんは、その後心療内科の受診を中断してしまったのです。

美咲さんは現在も通院はしておらず、相変わらず化粧品や洋服などにお金を使ってしまいます。お小遣いで足りないお金は母親に要求をしてきます。多い時には月に10万円になることもあるようです。

●疲れ果てた母親に待ち受けていた現実とは――親子が迎えた結末は、後編【「親子で別居も考えなければ」ひきこもり娘の浪費がとまらない…家計破たんにおびえる母親が直面した「厳しすぎる現実」】で詳説します。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。