危険人物扱いの先輩から受けたJリーグ観戦の誘い
私が配属されたビジネス誌の編集部に、八木さんという3歳年上の女性がいました。見た目はそこそこ美形で40~50代のおじさんばかりの編集部のアイドルかと思いきや、「仕事よりプライベート」に徹するあまり、全員参加の編集会議を平気でスルーしたり、取材のアポをすっぽかしたりして、危険人物扱い。
そんな人とはなるべく関わらない方がいいと思って距離を置いていたのですが、ある時、向こうから話しかけられたのです。Jリーグの試合観戦のお誘いでした。
八木さんはJ1の人気チームの激アツサポーターで、アウェイ戦も含めてそのチームのほぼ全試合を現地観戦していました。地元の出身ということもあっていわゆる“箱推し”で、小学生の頃からのサポーター歴は20年以上になるそうです。
そんな八木さんに連れられて久しぶりに足を運んだスタジアムで、運命の出会いをしてしまったのです。八木さんの応援するチームで左サイドハーフに起用されていた選手でした。
実年齢は私より数歳下ですが、長身で細マッチョな体型、目力の強いハーフ顔、さらにドリブルがうまいところが、私が高校時代に憧れていたサッカー部の先輩に瓜二つ。その日から彼のSNSをフォローし、試合のある週末は八木さんとスタジアム通いを始めたのでした。
事情が事情なので、夫には推しの話はしませんでした。ただ、その頃は夫も通常出社に戻っていて土日は仕事のため、八木さんとのスタジアム通いはバレずに済んでいました。八木さんのように遠征についていく経済的な余裕はなかったので、ホームの他は都内や横浜の試合ばかりでしたし、推しのユニフォームやタオルなどの応援グッズは洗濯した後はすぐに畳んで観戦用のバッグの中に隠していました。