「住まう」目的なら、都心のマンションは慎重に検討を
こうしたマンション価格の値上がりを目の当たりにすると、「都心のマンションは値下がりしないから、ローンを組んででも買った方が良いのでは」と考えてしまいがちですが、果たしてどうでしょうか。
あくまでも「私見」ですが、都心にマンションを買う必要はあるのかどうかを、考えてみたいと思います。
まず投資目的なら、「買う」という判断はありですが、正直、ここまで値上がりすると割高感を覚えます。投資目的で買う手はありでも、今の値段では買いたくない、というところでしょうか。
「住まう」ことが目的であれば、「買わない」。なぜなら資産価値の下落リスクがあるからです。
常識的に考えれば、時間の経過と共に建物の価値は減価していきます。居住者1人ずつに「敷地権」が付与されます。地価の値上がりによって、所有が認められている土地部分の価値が上昇すれば、全体の資産価値は下がらないのでは、と考えられなくもないのですが、昨今、都心に多数建設されているタワーマンションのように、1棟あたりの戸数が非常に多いマンションだと、その分だけ敷地権によって認められる土地は狭くなります。
それに加えて、大規模修繕の問題があります。大規模修繕の周期は12~15年と言われていますが、その際には区分所有者の4分の3以上の同意が必要です。
大規模修繕に関しては、よく積立金不足が問題視されますが、これから問題化するのは投資目的で外国人が所有している区分の賛成が得られず、しかも所有者の所在が不明、というケースです。買ったマンションの所有者に、投資目的の外国人が多数いたがために同意が得られず、大規模修繕などが滞ってマンションの価値が低下するということも、十分に考えられます。
今般、国土交通省が、都心マンションの購入に占める外国人の割合に関する実態調査に乗り出す方針を打ち出しました。調査結果が出たとして、何か対策が講じられるのかどうかは定かでありませんが、これらのリスクが想定されるマンションを、長期ローンを組んで購入すること自体がリスクだと考えます。
ということで、都心に住まうのであれば、賃貸マンションで十分です。賃料を支払うよりも買った方が後々資産になるという人もいますが、経年劣化が進んだマンションの資産価値などたかが知れています。そして資産価値の下がったマンションは、売却するにも苦労するでしょう。
あくまでシミュレーション上だが、賃貸×余裕資金の運用という選択肢も合理的
そう考えると、少なくとも都心マンションを高額なローンで買うくらいなら、リーズナブルな家賃で賃貸物件に住み、余裕資金を運用に回した方が合理的です。1億円の物件を買い、金利分も含めて長期のローンを払い続け、それを完済した30年後のマンションの資産価値が大幅に減価する現実を目の当たりにするか、それとも月々20万円の家賃を30年間支払い、余裕分を投資に回して増やすかの選択です。
あくまでもシミュレーションですが、1億円を1.39%の固定金利で借り入れ、30年かけて返済した場合の総返済額は1億2235万円です。
対して、月20万円の家賃を30年間払った場合の総額は7200万円。差額は5035万円です。
恐らく1億円のマンションを買った場合、30年後に資産価値がどの程度目減りするのかは、立地や希少性など諸条件次第ですが、値上がりするよりも値下がりしている可能性の方が高いと考えれば、月20万円の賃料を30年間払い続け、差額の5035万円を運用で増やした方が、30年後の人生の選択肢は豊かになるのではないかと考えます。