ビットコインETFの解禁を巡る日本の動き
ETFの解禁が強力な追い風となり、ビットコインは同年12月に史上初の10万ドルを記録。トランプ大統領の再就任を受けたさらなる規制緩和への期待感も相まって、ビットコインへの資金流入はその後も衰えていません。
25年3月、トランプ大統領は、「暗号資産の戦略的備蓄」に関する大統領令に署名しました。これにより、仮想通貨市場でのビットコインの長期的資産としての価値が高まりました。
アメリカに続き日本でも、ビットコインETFの解禁への期待感が高まっています。
日本では17年施行の改正資金決済法によって、暗号資産交換業に関する法制度が整備され、20年5月の改正金融商品取引法によって、暗号資産が正式に金融商品として認められました。ビットコインETFを日本で解禁する際、ハードルの一つとなっているのが投資信託法です。投信法のルールで、ETFを含む投信は、株式や債券など「特定資産」に分類される資産クラスに一定程度、資産を振り向けることが義務付けられ、ビットコインなどはこの「特定資産」の分類から除外されています。幅広い資産クラスに分散投資する一環としてビットコインを保有することは認められる可能性があるものの、ビットコインを主たる投資対象とするETFを上場させることは現行制度では困難です。
ビットコインETFの解禁に向けては投信法だけでなく税制を含めた抜本的な環境整備が必要ですが、与党が策定した2025年度の税制改正大綱には、政治サイドを巻き込んだ法改正の機運の高まりを印象づける記載が見受けられます。
暗号資産取引に係る課税については、一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ、上場株式等をはじめとした課税の特例が設けられている他の金融商品と同等の投資家保護のための説明義務や適合性等の規制などの必要な法整備をするとともに、取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に、その見直しを検討する。(2025年度与党税制改正大綱)
とりわけ、与党大綱の中で暗号資産を「広く国民の資産形成に資する金融商品」と明言している点が注目に値します。政府はよく、中長期的な資産形成の手段である「投資」と、ギャンブル的な要素が強い「投機」とを区別するといったロジックを用いますが、ブロックチェーンを含む暗号資産は前者の「投資」の手段として、政策的に普及を後押しすることが望ましいという認識を示したのです。
海外投資家はなぜ、日本に投資するのか
著者名 ワイズマン廣田綾子
発行元 日経BP 日本経済新聞出版
価格 1,100円(税込)