投資家ウォーレン・バフェットによる日本商社株への投資は、大きな話題となりました。国内では外国投資家の日本株への期待の表れと伝えられましたが、その狙いは別のところにあったのかもしれません。

長年、日米の金融市場で投資を手がけてきたファンドマネジャー、ワイズマン廣田綾子氏はバフェットの商社株への投資と高騰するビットコインや金(ゴールド)の関連性を指摘します。

いま世界中の投資家が“限りある資産”に注目する理由、そして日本で起きている変化を解説してもらいます。

●前編:「日本の成長力に目をつけている」の解釈は表面的…バフェットが商社株を選んだ“本当の狙い”は?

※本稿は、ワイズマン廣田綾子著『海外投資家はなぜ、日本に投資するのか』(日経プレミアシリーズ)の一部を抜粋・再編集したものです。

 

ビットコインETFの解禁

代表的な実質資産として、ビットコインや金、そして知的財産などが挙げられます。「デジタルの金」とも呼ばれるビットコインは、サトシ・ナカモトを名乗る人物の論文をベースに2009年1月に誕生しました。ビットコインの発行上限は2100万枚と決まっていて、希少価値という点では優れた実質資産と言えるでしょう。

仮想通貨元年と言われた17年には、ビットコインの価値が1年間のうちに1000ドルから2万ドルに急騰。その後、コロナ禍で世界中の投資マネーが仮想通貨に流入し、21年に初めて6万ドルを超えました。その後、ビットコイン市場の盛り上がりをさらに加速させたのは、24年1月の米国証券取引委員会(SEC)によるビットコインを対象とした上場投資信託(ETF)の解禁です。

ビットコインETFの解禁をめぐっても、紆余曲折がありました。もともと米国商品先物取引委員会(CFTC)はビットコインを含む暗号資産について、株式や債券のような「証券」ではなく、「コモディティ」、つまり金などと同じ商品であると整理していました。金の現物に投資するETFはすでに存在していたため、同じコモディティであるビットコインのETFも、理屈上は問題なく上場できるはずでした。

しかしいざビットコイン現物ETFの上場申請が届くと、SECは市場の不透明性などを理由にことごとく拒否していました。これに対し連邦控訴裁判所は、SECの判断が合理的でないとして異議を唱え、侃々諤々の議論の末に24年1月10日、アメリカで初となるビットコイン現物ETFの承認にこぎつけたのです。