プラチナNISAを提案する意図はどこにあるのか
では、なぜそれを今、高齢者対象とはいえNISAで買えるようにするというアイデアが浮上してきたのでしょうか。
高齢者といえば、すでに資産形成は終わり、それをいかに活用していくかというのが主目的になります。いわゆる資産活用です。65歳以上になると概ね退職し、定期収入は公的年金が中心です。
とはいえ昨今では、公的年金だけでは心許ないという声は多く、だからこそ6年ほど前に「老後2000万円問題」が大炎上したわけですが、分配金や売却益を非課税にできるNISAの対象に毎月分配型投資信託を組み込めば、その心許ない公的年金を多少なりともカバーでき、公的年金に対する不安・不満を払拭できるのではないか、という当局の算段が透けて見えるような気がします。
加えて言うなら、NISAの口座数増・残高増も期待できそうです。2025年4月3日に金融庁が発表した資料によると、世代別のNISA口座開設状況は、2024年9月末時点では以下のようになっています。
10歳代・・・・・・12万8936口座
20歳代・・・・・・287万8530口座
30歳代・・・・・・439万1484口座
40歳代・・・・・・482万6897口座
50歳代・・・・・・481万0864口座
60歳代・・・・・・369万1248口座
70歳代・・・・・・285万8589口座
80歳代・・・・・・149万9673口座
さらに上記の数字を、2024年10月1日現在の人口推計を用いて、各世代別のNISA口座開設率を計算してみます。
20歳代・・・・・・22.99%
30歳代・・・・・・33.10%
40歳代・・・・・・29.48%
50歳代・・・・・・28.32%
60歳代・・・・・・23.98%
70歳代・・・・・・18.83%
80歳代以上・・・・・・11.42%
このように30歳代、40歳代、50歳代、60歳代が一山をつくり、70歳代以降は下がっています。
さすがに70歳代、80歳代以上の人たちに対して「さあ、これからNISAで資産形成をしましょう」などと呼びかけたところで、響かないのは当たり前。そこで、「毎月分配型投資信託で運用しながら取り崩して、資産寿命を先延ばしにしましょう」とアピールすれば、NISA口座の開設率が低い世代の関心が高まり、NISAの口座数や買付額が増えるかもしれないという、政策当局側の考えもあるのかも知れません。