◆「社債」や「ゴールド(金)」など多様な資産に分散の動き

三井住友銀行の売れ筋ランキングで「GSグローバル・パーシャルヘッジ社債ファンド」や「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」がランキング順位を大きく上げている。「GSグローバル・パーシャルヘッジ社債ファンド」は、主に短中期の社債に投資、為替ヘッジを70%程度と部分的(パーシャル)に行うファンド。投資する社債の格付けは、投資適格債が70%、ハイ・イールド社債が30%を基本配分とし、ポートフォリオの平均格付けは投資適格級(BBB-格相当以上)を維持する。為替ヘッジをすると為替変動のリスクを低減することができるが、ヘッジするための費用を負担しなければならなくなる。同ファンドが採用した70%というヘッジ比率の水準は短中期の社債に投資する際に投資効率が良い比率を選んでいる。

「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は、金の現物に投資し、金価格の動きをおおむねとらえることをめざすファンド。金価格は、トランプ政権の関税政策によって米国がインフレ、かつ、景気後退に陥るとの警戒感から米国株価が大幅に下落した4月上旬に史上最高値を更新し、NY金先物価格は1トロイオンスあたり3244.6ドルに達した。2024年12月末が2641ドルだったため、年初から3カ月余りで22.85%も値上がりしている。株価が不安定な動きを続ける中で、金価格は堅調に高値を更新し続けている。

新NISAがスタートした2024年1月以降、投資信託の人気はおおむね「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信D」、「インベスコ 世界厳選株式オープン(為替ヘッジなし・毎月決算)」の4ファンドに集中してきた。4ファンドともに為替ヘッジがなく、先進国株式を中心にした外国株式型のファンドだ。結果、ほとんどの投資家が、「為替ヘッジなしの外国株式」に投資している状態になっていた。

それが、トランプ関税によって円高・ドル安となり、米国株をはじめ外国株式が大きく下落することになって、投資した資金の評価損益がマイナスになってしまう投資家が続出するようになっている。3月になって「社債」や「ゴールド」など、株式とは異なる資産を対象としたファンドの人気が高まってきたのは、資産の保全を意識した分散投資の機運が高まってきたためと考えられる。

米国の関税策の決着がつくまではそれなりの期間が必要と考えられ、株式市場が落ち着きを取り戻すまでにも時間がかかりそうな気配だ。資産を分散するために債券やゴールド等に投資するファンドや、最初から幅広い投資資産に分散投資するバランス型ファンドなどが見直される展開になってきたようだ。

執筆/ライター・記者 徳永 浩