コンプライアンス意識の緩みも“都市開発・観光事業”の利益から!?
その原因のひとつは、フジ・メディアホールディングスが保有している膨大な不動産です。
直近の有価証券報告書を見ると、同社が保有している不動産の総額は、土地と建物を合わせて5294億5200万円であり、そこから生じる利益がかなり大きなものになっています。
第2四半期(中間期)の営業利益は138億円ですが、このうち98億円は不動産事業を中核とする都市開発・観光事業によるものです。営業利益の65.59%が都市開発・観光事業から生じていますから、フジ・メディアホールディングスという社名を持ってはいるものの、実体は不動産事業者と考えるべきでしょう。
そして、ここに目をつけて同社株式に投資したのが、レオス・キャピタルワークスです。2月7日に財務省へ提出された大量保有報告書によると、レオスはフジ・メディアホールディングスの株式1200万株を保有し、発行済株式数の5.12%を占める大株主になりました。
NHKの取材に対してレオス側は、「フジ・メディアホールディングスは保有する不動産の価値が高く、収益も安定しているため、倒産リスクが低いと判断した」と回答しています。確かに、保有している不動産で、ホールディングス全体の営業利益の65.59%を稼ぎ出しているのですから、スポンサー企業の広告出稿がなくなったとしても、倒産するリスクはかなり低いと考えられます。
ただ、それがメディア事業の甘えにつながった面もあったと考えられます。保有している不動産から十分なキャッシュフローが得られ、業績が低空飛行になったとしても倒産はしないとなれば、メディア事業がおざなりになるのも無理はないでしょう。
フジテレビのスキャンダルは、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスに対する意識の緩みに原因を求める声が多く聞かれるものの、その意識の緩みがどこから生じたのかを考えた時、都市開発・観光事業が保有する不動産から生じる、莫大(ばくだい)なキャッシュフローに要因のひとつがあるように思えます。
フジ・メディアホールディングスの発行済株式数の7%超を保有し、「物言う株主」として知られているダルトン・インベストメンツが、フジ・メディアホールディングスに対し、MBOによって株式を非公開化するのと同時に、コンテンツビジネスなど放送事業に特化するよう、かつて提案したことがあるのは(2024年5月)、無理難題を吹っかけたというよりも、むしろそれがコンテンツ事業者として当然であり、ある種、甘えの構造を払拭したいという考えが、ダルトン側にあったのではないかと推察します。