何より大切なのは健康で長く働くこと

税金というのは赤字になれば払う必要がありませんが、社会保険料というのは赤字でも払わなければならないため、その負担の大きさを訴える企業もあるほどです。

ただ、就職氷河期世代の立場に立てば、非正規雇用の厚生年金への加入が促進されることは望ましいことと言えます。ほかにも年金制度改革によって年金受給額の減少を抑制できれば老後の生活に少し安心感が持てますし、新NISAや確定拠出年金などを活用すれば、「節税しながらお金に働いてもらう」ことも可能になります。

そして、何より大切なのは健康で長く働けるように努めることです。

実際2023年の高齢者の労働参加率を年齢階級別にみると、65~69歳は53.4%となっています。70歳以上も18.6%となっています[シニアの労働参加率(図表34)]。

 

この数字が喜ばしいことかどうかは人によると思いますが、人生100年時代となり、定年年齢の65歳を過ぎても働くことのできる人が増えているのは確かです。

老後の資金が足りないというと、どうしても「お金を貯める」ことに目が行きがちですが、「健康で長く働く」ことができれば、そこまで貯めなくても余裕のある老後を送ることができます。

就職氷河期の問題は、何度も触れたように、社会全体で取り組む問題ですが、同時に社会の価値観の変化もあったでしょうし、安定した就職をすることができずとも、経済的に「自分でできることは何か」と考え、できることをやるのも大切なことなのです。

就職氷河期世代の経済学

 

著者名 永濱利廣

発行元  日本能率協会マネジメントセンター

価格 1,870円(税込)