株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。

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神様:Tさん、2月9日と言えば、何の日ですか?

T:2月9日と言えば…2(に)と9(く)で「肉の日」ですか?

神様:それが有名ですね。他にも、2を「ふ」と読ませて「服の日」や「福の日」などもあります。同じ読み方で「副業の日」でもあるそうです。Tさんは、副業を積極的に行っていますか?

T:本業が忙しいので副業は行っていないですね。世の中の流れとしては、副業がどんどん認められていますよね。

神様:副業や兼業を希望する人も年々増加しています。厚労省では「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表し、副業の促進を図っています。ガイドラインは企業に対して「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」と述べ、労働時間以外の時間については労働者の自由である、とのスタンスを明確にしているところです。

T:時代の流れと言いますか、昔では考えられないことですね。

神様:企業規模に関わらず人手不足が深刻化している中で、多様な人材の確保が求められています。働き方改革の推進もあり、時間外労働を前提とした長時間労働が是正される環境になってきています。このような状況の中でニーズが高まっているのが「スポットワーク」です。スポットワークとは、従業員と雇用者が短期の雇用契約を結び、継続した雇用期間は持たず、数時間から数日間だけ働くことを指します。

 

T:いわゆる「スキマバイト」とも言われますよね。

神様:その通りです。移動時間や待ち時間などのスキマ時間を活用することから、スキマバイトと呼ばれます。育児や家事の合間などをうまく利用することもでき、本業などによる時間的な拘束のためアルバイトをすることができなかったワーカー層を雇用することも可能です。実際、スポットワーク登録者の過半数は別企業の正社員であるとのデータもあります。

T:ところで、スポットワークとは対照的に、従来型のアルバイトを集めることが難しくなっていると聞きますが、これはなぜでしょうか?

神様:労働人口の減少がもちろん大きな要因ですが、その他にも「年収(103万円)の壁」も要因の一つとして挙げられます。年収の壁とは、アルバイトやパートで働く人が一定以上の収入を得ると、社会保険料の負担が発生し、結果として手取り収入が減少することを言います。2月4日、政府はこの壁を見直し、給与所得者の非課税枠を20万円引き上げ123万円とする法案を閣議決定しました。今後の国会での審議に注目です。

 

T:今後さらに人手が不足することを考えると、もっと多様な働き方ができる社会になってほしいですね。

神様:人口ピラミッドの推移を見ても分かる通り、今後の労働需給はさらに厳しさを増していきます。スキマバイトのニーズはさらに高まるでしょう。スキマバイト関連アプリを提供する企業では、スキマバイトの潜在市場を3.9兆円と試算しているところもあります。

T:今後の市場の成長が大いに期待できる分野ということですね。スキマバイトのメリットと言えば、アプリやウェブページを通して気軽に申し込むことができ、さらに、仕事をした後すぐに収入を得られる手軽さが挙げられます。こういったハードルの低さは大きな魅力ですね。

神様:雇用する企業側にとっても、融通が利くこと、単発だけ利用できることなど、多くのメリットがあるようです。これまでスキマバイトの雇用先は小売、飲食、物流などが主流でしたが、今後は他業界への拡大が見込まれます。厚生労働省では、介護業界において資格が不要な送迎や清掃などの業務をスキマバイトとマッチングする試みを推進しています。報道によれば、こちらもアプリを利用して募集を行うようです。

T:厚労省がスキマバイトとは、ちょっと意外な気がしますが、そんなことは言っていられない雇用状況です。成功事例はどんどん活用すべきですよね。今後も様々な業界にスキマバイトを活用し、新たな人材ビジネスとして成長していくことを期待したいです。