――いわゆるインベストメントチェーンの一員として企業や経済・社会を変革するダイナミズムを感じられる半面、資産形成のさなかにある個人からすれば、やはり老後のために投資している側面もあって、中長期的なリターンも気になると思います。
藤野氏 未上場企業投資といっても、シードステージ、アーリーステージ、レイターステージの3段階があります。レイターステージであれば主幹事証券会社が付いていて、立派な経営陣がおり、かつ監査の体制もしっかりしていますから、投資リスクもシードステージに比べれば低くなります。
われわれは、このレイターステージの未上場企業に投資するわけですが、日本の場合、上場直前期から投資して、上場後も投資し続ける資金の出し手が実はあまりいません。ベンチャーキャピタルはじめ多くの投資家が、上場と同時に株式を売却してしまうからです。結果、ベンチャー企業の多くが、上場直後に成長資金を十分に確保できず、成長が伸び悩む「死の谷」に直面してしまいます。
とはいえ、日本で未公開株を上場後も保有し続けるクロスオーバー投資を実現するのは非常に難しい。というのも、上場株の知識は当然必要ですし、未上場株への知識もないとできないのですが、日本の場合、上場株の運用と未公開株の運用の間に知識面でもマインドセット面でも“断絶”があって、シームレスに関われる人が少ない状況があるためです。
でも、グループにベンチャーキャピタルを抱え、社内には上場企業の調査・運用体制の整っている私たちならばそれができる、しかも“スター候補”の魅力的な企業はたくさんある――ここに強みがあると思っています。
実際、「長期的に保有してくれる“ひふみ”に投資してほしい」とおっしゃって私たちの元に多くの経営者が殺到してくれています。私たちはそこから“一握りの本当にいい会社”を厳選できる状況にあります。
リターン追求と同時に、スタートアップ企業の中長期の成長を支え、日本の社会に良い影響を与えたい――ずっと前から思い描いていた理想的な運用をようやく始めることができたわけです。
――まだ知られざる、でも魅力やポテンシャルをひめた企業に“推し活”できると聞くと、ワクワクします。まさに、既存の投資信託と一味違う、新機軸の選択肢ですね。松本さんのご活躍とともに、今後も注目していきます。ありがとうございました。