昨年2月、投資信託協会が運用の自主規制ルールを見直した。公募型投資信託には認められていなかった未上場株式の組み入れが、純資産総額の15%を上限に可能なったのだ。それによって、2024年9月に設定されたのが、レオス・キャピタルワークスの「ひふみクロスオーバーpro」。

未上場株式も組み入れ、さらに上場後も投資し続ける「クロスオーバー投資」に込めた想いとは。また、25歳という若手社員をファンドマネージャーに抜擢した狙いは何なのか。代表取締役社長 藤野英人氏と運用を支える株式戦略部 ファンドマネージャー 松本凌佳氏に話を聞いた。

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――「ひふみクロスオーバーpro」が話題です。ファンドのコンセプトもさることながら、ファンドマネージャーに25歳の松本凌佳さんを抜擢された点も注目されています。ファンドマネージャーは30~40代のアナリスト経験を持っている人がなるものというイメージもあるなか、今回、松本さんを抜擢された理由を教えて下さい。

藤野氏 上場株式と未上場株式をミックスしたファンドを作りたいという構想は、ずいぶん前からありました。ただ、いつ規制が緩和されるかわからない。そんな時に、大学の先生を通じて知り合ったのが当時、まだ大学生だった松本でした。

彼のゼミでの発表を聞かせてもらい、分析力に優れていて、面白い発想を持っていると感じ、ぜひとも欲しい人材だと思いました。

その後、縁あってレオスの面接を受けに来てくれたのですが、なぜか面接で落とされていたのです。どうも本人は“就活”の面接が苦手なようで……でもそこも含めて彼らしい魅力だと思ったんです。私は基本、人事にはほぼ介入しないのですが、彼を落としてはいけない! と“勝手内定”を出し(笑)、経営者面談に来てもらったという経緯があります。

25歳の彼をファンドマネージャーに抜擢したのは、彼が持つポテンシャルへの期待感と、やはり年齢ですね。未上場企業の経営者は若い。一方、私は今、58歳で、気持ちは若いつもりですが、言うなれば彼らからすればお父さんの年齢です。ベテランとしての経験値が役立つこともありますが、同じ目線で話すことが難しいと感じるときも正直なところあります。だからこそ25歳の松本を抜擢したのです。

刑事ドラマには、老練な刑事と若手刑事のバディものというパターンが結構あります。あれにはやはり意味があって、運用の世界でも一脈通じるものがあるのではないかと考え、さながら若手刑事役に松本、ベテラン刑事役に私というキャスティングで、運用に当たっています。

「バディ風に」という編集部のオーダーに笑顔で応じていただいたショット。ジャケットの中には、「ひふみクロスオーバーpro」のTシャツが。左から、レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長の藤野英人氏、株式戦略部 ファンドマネージャーの松本凌佳氏。

――松本さんはなぜ資産運用の世界を志したのですか。

松本氏 学生の時に藤野さんと出会い、開示情報に基づいて魅力的な会社を見つける面白さを知ったことがきっかけですが、就職活動で運用業界を目指したのは、数字の裏側に入り込みたいと思ったからです。

米国の大手半導体企業がものすごい勢いで成長していることは、決算の数字を見れば明らかですが、こうした急成長の裏側に何があるのかというと、まさに今、革新的な成長の最中にある生成AIへのコミットがあるからです。

誰もが名前を知っている世界的企業ならば、さまざまなところに開示情報があるので、成長の裏側に何があるのかを比較的容易に調べられますが、国内上場企業の中小型銘柄、さらには未上場企業の決算の裏側など、一生懸命にインターネットで調べても、まず引っ掛かってきません。それを企業のかたにお目にかかってお話を聞いて取材し、数字の裏側の物語をひも解いていく――それはとても面白いことだなと思って、運用の世界を志しました。