人間の価値観はそれぞれ

義両親や妻との二世帯生活を通じて感じたのは、人間の価値観はそれぞれ違い、価値観の違いを受け入れて暮らしていくのはなかなか骨の折れる作業だということです。

義両親も妻も誠実で思いやりのあるいい人たちですが、日常生活を送る上では価値観の違いを意識せざるを得ない場面が多々あります。私はアニメの『サザエさん』ふうに言えばマスオさんの立場ですから、そんな時は見ないふり、感じないふりをして義両親や妻に従うしかありませんでした。

不思議なのは、そうした環境で育った息子はまた違う価値観を持っていることです。

昨春から社会人になった息子は、成人後に小遣いを元手にFX(外国為替証拠金)取引を始めてそれなりに稼ぎ、大学3~4年の2年間は私の扶養から外れていました。入社後は新しい少額投資非課税制度(NISA)の口座を開設し、投資信託の積み立てにも励んでいるようです。「目標は自分自身が“稼げる人”になること。一方で、手持ちのお金にも稼いでもらいたいから、当面はアグレッシブなFXと堅実なNISAの両建てでやっていく」と言います。

息子によれば、自分は「ハイリスク志向のお父さん系のDNAと堅実すぎるお母さん系のDNAのハイブリッド」なのだそうです。何だか笑ってしまう物言いですが、確かに一理あるように思えます。

義両親がいなくなったからと言って、義実家流の価値観が大きく変わるとは思っていません。妻もいますし、近くには義両親以上にお金にシビアな義姉一家も住んでいます。しかし、定年を控えて残りの人生もこのまま義実家流の価値観の下で暮らしていくのは正直受け入れがたく、かと言っていまさら“マスオさんの反乱”を起こす勇気もありません。

願わくは、妻が息子に触発されて価値観を変えてくれないかとわずかな期待をつなぐ昨今です。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。