PayPayアセットマネジメント事業終了が残したもの

そして3点目ですが、恐らくこれが来年の投資信託で大きな問題になると考えています。運用会社の事業継続性です。

日本の運用会社は長年、大手金融機関ならびに外資系金融機関の日本子会社として設立され、事業を展開してきました。そのため大半の運用会社は、それほど資金が集まらなくても、とりあえず事業を継続できました。

実際、過去において投資信託事業を行ったものの、金融庁からの業務改善命令に従わず、行政処分でライセンスを取り消された運用会社が2社ありました。ムーンライトキャピタルとあいグローバル・アセット・マネジメントがそれです。

しかし2025年9月末をめどに投資信託事業から撤退するPayPayアセットマネジメントの場合、業績悪化を主因として自ら事業撤退を決めた初めてのケースといっても良いでしょう。業績悪化による事業撤退という既成事実ができたことにより、今後、投資信託ビジネスが軌道に乗らない運用会社が、投資信託の運用から撤退することも十分に考えられます。

もちろん運用会社が投資信託事業から撤退したとしても、運用しているファンドの多くがインデックスファンドであれば、他の運用会社に運用を引き継いでもらうことも可能です。実際、PayPayアセットマネジメントも、インデックスファンドを中心にして他の運用会社に運用を移管させます。

しかし問題なのは、アクティブファンドの場合です。アクティブファンドの場合、運用会社が変わることによって、ファンドの運用哲学、運用方針、もっといえば運用担当者の能力も全く違うものになってしまう恐れがあります。いや現実問題として、全く同じ運用を継続できるとは、とても思えません。

NISAの制度見直しによって、長期間、非課税の恩恵を受けるために投資信託で資産運用する人が増えています。来年になればiDeCoの拠出限度額が引き上げられ、さらに長期の資産形成に対する関心が高まるでしょう。こうしたなか、アクティブファンドで資産を運用するのであれば、運用会社の事業継続性をしっかり見極める必要があります。

では、どうすれば運用会社の事業継続性を見極められるのか、ですが、まず投資信託協会のサイトから、「統計データ/調査」のタブから「運用会社別資産増減状況」をクリックしてください。このうち「純資産総額」の小さな運用会社は注意した方が良いでしょう。

ただし、この純資産総額はあくまでも個人向けに販売している投資信託ビジネスにおける純資産総額であり、なかには法人・機関投資家向けの運用を行っているところもあります。たとえばコモンズ投信の場合、上記の資料で見ると個人向け投資信託の運用資産総額は771億5300万円です。しかし、私募などそれ以外のファンドも含めた運用資産総額は、2024年3月時点で1144億2200万円もあります。運用資産総額がいくらあれば安心とは一概に言えませんが、できれば1000億円は欲しいところです。

純資産総額を把握したら、次は自分が購入したいと思っているファンドの運用会社の業績をチェックします。運用会社のホームページに、貸借対照表と損益計算書が掲載されているので、これを時系列でチェックすれば良いでしょう。赤字が何期も続いている運用会社は避けた方が無難です。

かつては大手金融機関系や外資系しか投資信託ビジネスに参入できませんでしたが、参入規制の緩和によって、独立系などもだいぶ増えてきました。

しかし、だからこそ事業継続性を十分にチェックする必要性が、ここ最近は特に高まってきていることを、認識しておくべきでしょう。