◆割安に放置されてきた「金融」株に注目が集まる
月次のパフォーマンスのトップは「ダイワ金融新時代ファンド」の8.06%だった。このファンドは資金流入額ランキングでも第4位に入っている。パフォーマンスの第2位は「日本郵政株式/グループ株式ファンド」の6.79%で、これも「金融」関連のファンドだ。金融関連銘柄が注目される理由は、国内経済にインフレ(物価上昇)が定着しつつあり、日銀が利上げ政策を進めているところにある。長らく続いたゼロ金利・マイナス金利政策が終わり、2024年3月に17年ぶりの利上げに踏み切った日銀は、7月末に政策金利を0.25%に引き上げた。この結果、日銀当座預金を保有する民間金融機関の受取金利は0.25%であるのに対して、都市銀行の普通預金金利は0.1%程度に設定されており、「金利のある世界」のもとで銀行の利ざやが拡大している。今後も日銀が利上げのスタンスを崩さない限り、銀行業は日銀の追加利上げによる業績拡大が期待される。
ただ、実際には日銀は12月の政策決定会合での追加利上げを見送り、2025年1月の政策決定会合で利上げするどうかも流動的だ。日銀の追加利上げは国内の賃金上昇が継続し、緩やかなインフレが続くような経済環境を維持できる見通しが持てるかどうかにかかっている。
一方、長らく続いた超低金利の環境では、銀行をはじめとして国内の金融関連株式が割安な水準に置かれてきた。「ダイワ金融新時代ファンド」は2024年10月末時点で組み入れ銘柄の71%がPBR(株価純資産倍率)で1倍割れになっているとレポートしている。同時期にTOPIXのPBR1倍割れは27%だ。また、「金利のある世界」に戻って収益性の改善が見込まれることから、銀行などは自社株買いや増配など株主還元の充実を打ち出すところが多い。この動きを評価した金融株の割安是正の水準訂正の動きは期待できそうだ。
執筆/ライター・記者 徳永 浩