ヤマダNEOBANKもBaaS―最近よく聞くBaaSには何のメリットがあるのか
そもそもヤマダ積立定期のサービスを提供した、ヤマダNEOBANKとは何なのでしょうか。
これはBaaSという仕組みを用いたサービスです。BaaSとは「Banking as a Service」の略で、銀行が提供しているサービスを、銀行以外でもインターネットを介して提供できるようにしたものです。ヤマダNEOBANKの場合だと、家電量販店という銀行とは全く関係のない業態でありながら、顧客サービスの一環として預金や融資といった銀行サービスを提供しているのです。
もちろん、ヤマダデンキが自らの信用で預金を集めたり、融資を行ったりしているわけではありません。裏側には本物の銀行がいます。ちなみにヤマダNEOBANKの裏側にいるのは、住信SBIネット銀行です。要するにヤマダNEOBANKは住信SBIネット銀行の銀行代理店という扱いになっています。現在、住信SBIネット銀行がBaaSとして展開しているNEOBANKは、ヤマダNEOBANKだけでなく、日本航空とのJAL NEOBANK、高島屋との高島屋NEOBANK、第一生命との第一生命NEOBANKなど、全部で19ものNEOBANKが、各提携先企業と共に運営されています。
このようなサービスが登場したのは、銀行と提携先企業双方の利害が一致しているからです。
銀行としては、既存の銀行ビジネスだけではさらなる成長が期待しにくくなっていますし、提携先企業としては疑似的とはいえ自社ブランドを冠した銀行サービスを顧客に提供することで、新しい付加価値を提供できます。
たとえばヤマダNEOBANKを例に挙げると、「ヤマダNEOBANK住宅ローン」の提供を通じて、持ち家を購入した人に家電購入を促せます。その呼び水として、住宅ローンの借入金額に応じたヤマダポイントを提供しています。当然、ポイントを超える額のお買い物をすれば、それだけヤマダデンキとしては本業の売上増につながります。
一方、住信SBIネット銀行としては、ローコストで預金やローンを増やせる可能性が高まります。NEOBANKはインターネット金融の一種なので、実店舗や、そこで働く行員を持たずに、預金や住宅ローンの申し込みを集めることができるからです。まさに銀行ビジネスのDX化です。
しかも、銀行としては預金の利率を低めに抑えても、提携先企業のポイントを付加することによって、利用者に提供できる実質的な利回りを魅力的なものにできます。ポイントは基本的に提携先企業の負担になりますから、どれだけ高い還元率になったとしても、銀行の懐が痛むものではありません。
こうしたことから今後、BaaSを通じた銀行サービスの提供は、大きく拡大していく可能性があります。
しかし、それにしてもこれを書いていて全くわからないのは、どうしてヤマダデンキがこれだけの大盤振る舞いをしてしまったのか、ということです。
同社のリリースによると、「事前の想定・準備において弊社の見通しが甘かったと認識しており」と書かれていますが、どういう想定をしていたのか、どういう点で見通しが甘かったのか、改めてサービス開発者に話をうかがいたいところです。