◆デフレ脱却で「金融」の逆襲が始まる?
10月のランキングの特徴は、日本株上昇への期待の後退とともに、「netWIN GS テクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)」や「半導体関連 世界株式戦略ファンド(愛称:半導体革命)」のランクアップにみられる米国ハイテク株人気の復調だ。これまでの上げ相場の主役であった米国大型ハイテク株への期待が戻ることによって、「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター) Bコース(為替ヘッジなし)」や「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)【愛称:世界のベスト】」などのここ数年の主力ファンドも復調している。
一方、日本株についても「日経225」のようなインデックスについては評価が後退しているものの、投資先を「金融」に絞り込んだ「ダイワ金融新時代ファンド」は、急速に評価を高めている。同ファンドは、「三菱UFJフィナンシャル・グループ」「三井住友フィナンシャルグループ」「みずほフィナンシャルグループ」といったメガバンクの他、「東京海上ホールディングス」「第一生命ホールディングス」「野村ホールディングス」など生損保・証券まで、日本の「金融」に特化して投資している。その結果、過去のパフォーマンスは、2024年10月末時点で過去5年間でTOPIX(配当込み)が+82.3%のところ、同ファンドは+138.7%、過去3年でもTOPIXの+45.2%に対して+103.7%、過去1年でもTOPIXが+22.4%のところ+30.1%と、ここ数年のパフォーマンスが非常に優れている。
国内の銀行は、デフレ(物価下落)による国内景気の低迷、ゼロ金利政策が長期化する中で収益機会を奪われ、非常に厳しい経営環境を強いられてきた。実際に、同ファンドが設定された2006年5月30日から2024年10月末までの設定来のパフォーマンスは、TOPIXが+146.3%と約2.5倍になる中で、同ファンドは+37.1%にとどまる。TOPIXの水準に追いつくには、ここから基準価格が2倍になってもおかしくない。2024年3月の政策決定会合で日銀はマイナス金利政策の解除を決定し、7月に「0~0.1%程度」としていた政策金利を「0.25%程度」に引き上げることを決めた。この「0.25%程度」という政策金利は、リーマン・ショック後の2008年10月末から12月中旬まで続いた「0.3%前後」以来の水準だ。日本は約16年ぶりに「金利のある世界」に戻り、これから金融の正常化に向けた動きが本格化していくことと期待されている。
「デフレ脱却」や「金融の正常化」は国内景気の底堅さを背景に進んでいる。景気が良く、かつ、金利がある環境は、これまで「ゼロ金利」「マイナス金利」に苦しめられてきた銀行業界にとっては収益拡大のチャンスとなるだろう。同ファンドは、10月末時点のポートフォリオで55.2%を銀行業に割り当て、銀行の収益改善に投資している。過去5年でTOPIXを上回る成績になったとはいえ、より長期のパフォーマンスではTOPIXを下回っているため、依然としてTOPIXをキャッチアップする上昇が期待されるところだ。
執筆/ライター・記者 徳永 浩