◆輝きを放つ「Tracers S&P500ゴールドプラス」
10月のランキングで第6位にジャンプアップした日興アセットマネジメントの「Tracers S&P500ゴールドプラス」は2022年8月に設定され、設定から2年が経過したファンドだが、直近1年間のトータルリターンは70.05%と商品分類(追加型/海外/資産複合)平均の10.70%を大幅に上回っている。一般的に、資産複合タイプのファンドは、株式などのリスク資産への投資を債券などリスクが相対的に低い資産と組み合わせてファンド全体のリスク水準を低くすることをめざすが、このファンドの場合は、「株式(S&P500)」に「金(金先物)」を合わせている。もちろん、株式と金(ゴールド)は相関関係が低いため、株価の変動リスクを異なる変動リスクによって抑えるという効果は期待できる。ただ、状況によっては、株式も金(ゴールド)も同時に下落するというリスクもある。
さらに、「Tracers S&P500ゴールドプラス」は、先物取引を使うことによって、純資産の一部を先物取引の証拠金とすることで、「S&P500」インデックスを約100%購入し、さらに「金先物」を純資産総額の100%相当を保有するというポートフォリオになっている。同ファンドを1万円分購入すると、「S&P500」インデックスを1万円分に加え、「金先物」を1万円分で合計2万円分のポジションを得ることになる。10月30日にNY金先物は2800ドルを突破し、史上最高値を更新した。過去1年間は「S&P500」も「金先物」もともに史上最高値を更新するというダブルの価格上昇効果を享受している。その成果が年70%を超えるトータルリターンに結実した。
しかも、金価格は「地政学リスク」や「急速なインフレ(物価上昇)」など株価が下落するような悪材料には価格上昇する傾向がある。現在の米国株式市場の最大のリスクが「インフレの再燃」であることを考えれば、株式と金(ゴールド)の組み合わせは魅力的なペアともいえる。「株価の先行きに不安を覚えつつ、まだ株価の上値があるのではないかという期待を捨てきれない」という投資家心理にもフィットするファンドといえるのかもしれない。
執筆/ライター・記者 徳永 浩