さて、日銀のアンケートに戻りましょう。

 

「家計の見通しが成長する」「家計の見通しは成長しない」といった項目に関する回答をまとめたものです。赤の折れ線グラフは未来の日本の経済成長力が上がるか、下がるかを指数化したものとなっています。

マイナスで推移しており、先行きはあまり明るくないと考えている人が多いことを示す結果になりました。

しかしながら、青の折れ線グラフ(先行きの地価動向)はアベノミクスのところで上がり、近年も上昇基調にあります。つまりアベノミクスで起こったように土地の値段があがるはずだ。そう思っている人が増えていることを示唆する結果になっています。

つまり、貯蓄が増えると、マクロ的には株価や土地が上がる可能性があるかもしれない。そう考えることができるのではないでしょうか。

ポイントは「富裕層の消費性向は低い」ということです。つまり、先ほどの消費性向に関する結果を鑑みるに、「日本で富裕層が増えている」そう言えるのかもしれません。

私は学生時代に、貯蓄が増えると消費が減る、消費が減ると輸入が減るので相対的に輸出が増え貿易収支が黒字になり円高になる、そう経済学で学びました。

しかし、この図式はどうも違うかもしれない。貯蓄が増えることで、お金が外に出て、円安が進みやすくなるのではないか。そうなれば「資産立国」が実現できるかもしれない。

ただ、ISバランスを見ると必ずしも考えた通りには行かないかもしれません。「ISバランス」のISとはそれぞれI=investment、S=Savingを意味します。つまり、貯蓄と投資のバランスを示したものです。ISバランスで見ると日本は貯蓄が投資額を圧倒的に超過している傾向にあります。

果たして今後日本にはどのような未来がまっているのか。経済の面白い点は生物と同じように進化し続けていることです。アンケート調査、家計調査を見ても、いろいろな経済の進化や変化が見えてきますね。

 

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岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任