前回の記事はこちら「どうなる、アメリカ大統領選挙 勝敗を分けるのは「スイング・ステート」の失業率か

今回は先週10月10日のニュースを手掛かりに、庶民感覚で日本経済論を語ってみたいと思います。

日本銀行の「生活意識に関するアンケート」が10月10日に出ました。3か月に1回郵送ベースで「物価が上がっていると思いますか」「1年前と比べてゆとりはあると思いますか」といった質問をもとに日本国民の家計について迫る調査です。

アンケートにある質問に対する回答から、いくつか面白いものをピックアップして作ってみたのが次の画像になります。

 

「家計の景況感」をまとめたもので、青い折れ線グラフは「1年前と比べて家計の景況感はよくなったか」についての回答を指数化したものです。

リーマンショックではグラフがぐっとマイナスになり、アベノミクスになると急回復しました。ただ、0には戻らなかった。

コロナでもまた落ち込みました。少し戻っていますが、アベノミクスの初期のころに比べるとそこまで手ごたえはありません。

ただ、将来には希望を持っているようです。赤い折れ線グラフは1年後の景況感を予想したものですが、青線より良い値を示しています。

次のグラフがこちらです。

 

家計の収入についての回答をグラフにしたものです。前年比を示す青線グラフ、1年後予想を示す赤線グラフ共にはっきりとよくなっています。今年はアンケート調査が始まって以来、一番良い結果でした。

日本人の見通しは悲観的ですが、その中でも賃金の上昇は、家計においてはプラスの方向に働きだしたことを示している。良いことだと思います。

 

ただ、支出で見ると、必ずしもプラスとは言えない実態がわかります。1年前と比べて支出が増えたと回答した人は多い。それを受けてか、1年後の予想では、支出はあまり増えておらず、財布のひもが固くなっていることがわかります。

次に家計の支出のタイプを見ていきましょう。

 
 

青線のグラフは日用品など日常的な支出を示しており、やはりプラスに転じている。一方で赤線のグラフで示される選択的な支出、つまり電化製品や車、旅行などに対する支出は「余裕はありません」ということで、低調のままです。なかなか重い腰が上がらない。

もう少し掘り下げ、別の角度から見てみましょう。次のグラフは総務省の家計調査のデータをもとにしたものです。

 

特に「二人以上の勤労者世帯の平均消費性向の長期推移」をまとめたものになります。平均消費性向とは、可処分所得に占める消費支出の割合を意味します。

お給料をもらっても税金、社会保険料で使えるお金が限られる。その使えるお金の中の何割を消費したかをまとめたものだと考えてもらうとよいでしょう。

たとえば、3月の学校シーズンだと消費性向は上がります。逆に6月12月はボーナスが出る。ですので、グラフは12か月で均しています。

2001年の結果を見てみましょう。20年前の我々は可処分所得の8割を消費に回していました。

しかしながら、アベノミクスが始まると、所得は増えるものの、消費はそれほど増えず生活のレベルは上がっていないことが見て取れる。手取りが20万から30万に上がったが生活にかける支出は15万円のままで変わっていない。そんな結果になっているのです。

コロナがダメ押しになりました。コロナ後のデータを見ると実に3分の2しか支出に回していない。リオープンしましたが、それでも支出に回すお金は増えていません。

ただ、先ほどお話ししたように日本は収入が増える傾向にあります。収入が増えているのに、支出が増えていないとなると、我が国の家計の貯蓄は増えていることになります。