◆国内株ファンドの注目は「高配当株」と「日経400」
四半期ごとの運用成績を振り返ると国内株式インデックスファンドの「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」は、1-3月が21.48%だったが、4-6月はマイナス1.86%、7-9月はマイナス3.55%という成績だ。1-3月こそ素晴らしい成績だったが、その後は弱含み横ばいということになっている。4月以降に活躍らしい活躍をしていないだけに、これから年末に向けて活躍場面が訪れるという期待が続いているのだろうか。「三井住友・配当フォーカス・オープン」は、1-3月に12.46%と日経平均株価ほど上昇しなかったものの、4-6月に2.84%と粘り、7-9月はマイナス2.46%と軽微な下落にとどまった。高配当株の下落に強い性格が感じられる。
また、国内株ファンドの中で「JPX日経400」に連動するインデックスファンドがネットの売れ筋としてトップ5にランクインしてきたことに注目したい。「JPX日経400」は、日本を代表する225社で構成する「日経平均株価(日経225)」、プライム市場上場の全銘柄に投資する「TOPIX(東証株価指数)」と比較すると株式インデックスとしての存在感は薄い。ただ、3年平均ROE(株主資本利益率)を銘柄選定の条件に加えるなど、持続的な企業価値向上をめざす魅力的な銘柄群で指数を構成している。昨今、東証によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に対する是正勧告など国内株式の価値向上に向けた動きが強まっている。「JPX日経400」連動ファンドのパフォーマンスも、「日経225」や「TOPIX」の連動ファンドと比較すると、過去3年(年率12.36%対10.82%対11.85%)、過去5年(同13.77%対13.73%対13.30%)など、わずかながらパフォーマンスで勝っていることも見直されている要因と考えられる。
一方、バランス型ファンドの成績は、「のむラップ・ファンド(普通型)」の1-3月が7.16%、4-6月が3.83%、7-9月がマイナス3.05%だった。7-9月はやや緩んだものの、全体的には安定的な右肩上がりの運用成績になっている。「世界経済インデックスファンド」は1-3月に8.90%、4-6月に7.09%、7-9月はマイナス4.67%という成績だった。7-9月の下落期に4-6月のプラス分よりも下落率が抑えられた結果、こちらも緩やかな右肩上がりの成績を維持できている。7-9月に株式市場が大きく下落する場面もあっただけに、結果的に安定的な運用成績を残せたバランス型が評価されることにつながっているのだろう。
◆債券に50%投資する「世界経済インデックスファンド」が上昇
広島銀行の売れ筋のトップに上がった「世界経済インデックスファンド」は、世界の株式と債券に分散投資するファンドで、原則として株式と債券への投資比率は50%ずつとし、地域別(日本、先進国、新興国)の組み入れ比率はGDP(国内総生産)総額の比率を参考に決定している。現在の基本組み入れ比率は、先進国株式と同債券がそれぞれ27.50%、新興国株式と同債券がそれぞれ17.50%、国内株式と同債券がそれぞれ5.0%としている。世界全体の経済成長に合わせて資産価値を高めることをめざすファンドになっている。
過去のパフォーマンスを振り返ると、2024年9月末現在で過去10年のトータルリターンが年率6.54%、過去5年では年率10.47%という水準だった。これは、たとえば、米「S&P500」連動型インデックスファンドの過去5年で年率22.29%などという水準と比較すると見劣りするが、過去5年程度の期間は世界の金利水準が非常に低い水準に置かれ、2020年3月のコロナ・パンデミックの折には、各国の金利がゼロ、または、マイナスという金利のない状態にあったことが要因だ。つまり、同ファンドの資産の半分を投資している債券部分が収益化しにくい状態が続いていたということになる。
現在は、米国と英国の長期金利が4%前後、ドイツでも2%台の金利がある。債券部分での収益期待も高まったことで運用環境は格段と良くなっていると考えられる。過去1年間のトータルリターンは15%を超えている。今後への期待の高まりがランキングにも表れたといえるだろう。
執筆/ライター・記者 徳永 浩